今月のおもちゃ
Toys of this month
2018年6月
ちりめん細工 「金魚袋」
金魚は中国が原産地といわれ、日本には室町時代に舶来したと記録があります。江戸時代の文化文政の頃には、庶民の間で金魚を飼うのが流行り、縮緬で作るお細工物のモチーフとしても好まれました。明治時代の女学校や裁縫塾で使われた教科書、『裁縫おさいくもの(明治42年刊)』には、“金魚袋(琴爪入)”の型と作り方がのっています。
お細工物は、手の中におさまるほどの袋物がほとんどで、蝶結びや花結びなどでかわいく結ばれた打ち紐を解くと、内側は袋になっていて、香入れ、琴爪入れ、茶入れ、菓子入れ、鍵入れとして使われていました。ちりめん細工は、造形や配色の美しさとともに実用を兼ね備えたものでもありました。
『裁縫おさいくもの』の金魚袋の項には、「色合、裏表布とも赤を適当とす。」と指南されていますが、平成に復元された金魚袋は、胴体や尾の布に、多色柄やぼかし染が使われているものもあります。また、造形にもアレンジが加わり、平型の金魚や出目金などが創作され、現代の美意識を反映した金魚袋の世界が広がりつづけています。 大正時代および平成のちりめん細工の金魚袋、明治時代の教科書『裁縫おさいくもの』は、現在6号館で開催中のちりめん細工研究会30周年記念展「ちりめん細工の今昔」でご紹介しています。