今月のおもちゃ
Toys of this month雛人形細見「三人官女」
今年も日本玩具博物館では春恒例の特別展「雛まつり」が始まり、6号館展示室には、江戸後期から明治・大正時代の古雛たちがずらりと並んでいます。
古い雛人形たちに一歩近づいて、その表情を細見すると、作られた時代の様々な風俗が見えてきます。例えば、女雛や三人官女の眉や口元を観察すると、江戸時代終わり頃の女性の化粧の様子などもよくわかります。
中世の頃から始まったお歯黒は、江戸時代に入ると、黒が変色しないことから、“心変わりせず”という意味が込められ、結婚が決まると貞女は歯を黒く染める習いが生まれました。一方、眉化粧はもともと公家の男女、武家では女性に見られたもので、ある程度の年齢になると未婚既婚を問わず眉を剃り、額に別の眉を描いたといわれます。一般庶民の女性においては、結婚して子どもが出来ると眉を全部剃り落とし、置き眉を描くのが習いでした。
これらのことに照らして写真の三人官女を見てみましょう。白い歯を見せ、自然な眉のままの官女1は未婚の若い女性、お歯黒をほどこした官女2は結婚が決まった女性、眉を剃って額に眉化粧を施した官女3は、結婚して子どもを持った年配の女性と考えられます。
初節句を迎えた小さな女の子が健康に成長し、やがて嫁ぎ、子を成す・・・。雛段の官女たちは、女児の人生の幸福な歩み予祝する姿だったのかもしれません。 古い雛段のすべての三人官女がこのような年齢構成とは限らず、また昭和や平成の新しい雛人形にあっても時にこのような違いが表現されていたりします。皆さまのお家の三人官女はどのような年齢構成でしょうか?