心優しき佐土原人形 | 日本玩具博物館

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学芸室から 2026.05.27

心優しき佐土原人形

宮崎市佐土原町は江戸時代後期から続く「佐土原人形」の産地。江戸や上方の文化が陸路と海路、双方から寄せられる町であったため、京都の伏見人形の影響下に人形作りが始まりました。さらには博多人形の技法にも学びつつ大いに発展を遂げ、明治末~大正時代の最盛期、佐土原人形の窯元は14箇所を数えました。平成時代には「陶月」と「ますや」の二軒となり、現在、「ますや」の阪本家が佐土原の土人形作りの歴史を一身に受け繋いでおられます。
昨日は、その「ますや」の阪本寛子さんがお訪ねくださいました。当館所蔵の佐土原人形を展示ケースのなかから取り出してお目にかけたり、来館者とも触れ合いながら、佐土原人形のこれまでと今、これからのことについて、じっくりお話をお伺ったりして、とてもよい時間を過ごさせていただきました。

私たちが佐土原をお訪ねした2000年代後半のころは、寛子さんのご両親に当たる六代目・阪本兼次さん(昭和10年生まれ)と奥さまの由美子さん(昭和15年生まれ)が二人三脚で「ますや」の人形作りを担っておられました。(※20年前、2006年12月7日のブログでもご紹介させていただいたことがあります→

ご夫妻がご高齢となられたこともあり、2019年からしばらくの間は阪本家で人形作りを学ばれた市内在住の女性が七代目を継がれていたのですが、コロナ禍をこえて、2024年に兼次さんが亡くなられてからは「ますや」の廃業・閉店もお考えになられたそうです。———まずは工房を片付けようとご家族で品々の整理を始めたところ、そこへ、絵付けを待つ夥しい数の素焼き人形が出てきました。せっかくだからと、それらに彩色をほどこし、表情を描いていくにつれ、由美子さんは少しずつ元気を取り戻していかれました。常に傍らにあったかわいい人形たち、それらに思いを託し、表情をのせていく楽しさを支えに、今は、生き甲斐をもって土に命を与える仕事に向かわれているご様子。———寛子さんからそんなお母さまのお話をお伺いし、20年ほど前に何度かお目にかかった阪本ご夫妻のあたたかなまなざしがよみがえりました。郷土人形は、作り手の心をも癒し、励ます力をもっているのですね。

常設展示室で当館所蔵の佐土原人形を熟覧し、それぞれの人形の作者を同定していく寛子さん――佐土原人形を代表する「饅頭(羊羹)喰い」や童子物。また、佐土原では、江戸後期より農村歌舞伎が盛んに行われ、歌舞伎を題材にした人形も古くから地元の人々に愛されてきました。

これからも、八代目となられたお母さまを助け、先人に学びながら頑張っていきたいと寛子さんは話されています。地元の子どもたち、佐土原を訪れる方々に向けて、体験教室なども少しずつ広げ、積み重ねていきたいとも。郷玩好きの皆さまとともに、佐土原人形の継承を応援したいですね。素敵なホームページを作っておられますので、訪問なさってみてください! →佐土原人形店 ますや

(学芸員・尾崎織女)

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