「仕丁」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2012年2月

「仕丁」

  • 明治30年代
  • 京都府京都市
御殿飾り(明治30年代製)の中では宴を楽しむ三人の仕丁

  雛人形とは、一般的に、内裏雛だけでなく、三人官女、五人囃子、随身(左大臣・右大臣)、仕丁を含めた15人揃いをさしています(かつて、地方ではこれら以外の人形でも、桃の節句に飾りつける人形は、皆、“雛”と呼ばれていました)。

 雛飾りの人形たちの中で、最も親しみやすいのは、“仕丁(しちょう)”ではないでしょうか。仕丁とは、徭役(君主や地主の命のもとに行われる住民の奉仕)に従事する人たちをさします。 “つかえのよぼろ”とも呼ばれ、大和朝廷の時代から存在しました。

 関東で好まれた仕丁は、台傘、立傘、沓(くつ)台)を捧げもち、かしこまった表情で座すものでしたが、御殿飾りなどに登場する京阪の仕丁は、食べ物の煮炊きをしながら酒盛りをしたり、掃除用の箒やがんじきを放り出して談笑していたり…と、庶民的で親しみやすい人々です。酒盛りの仕丁たちは、徭役の期間が明けた祝宴を開いているとも、宮中に婚礼を祝っているとも、様々な物語が想像されます。

 “泣き上戸(じょうご)、笑い上戸、怒り上戸 ”とも呼ばれるように、特徴的な表現によって雛飾りに人間的な感情をそえる役割を果たしてきました。写真の仕丁は、明治30年代の京阪製で、現在6号館で開催中の「雛まつり~江戸と明治のお雛さま~」に展示しております。雛飾りに一歩近付いて、彼らの豊かな表情をご堪能下さい。