今月のおもちゃ
Toys of this month
2008年11月
「カチナ人形」
ホピ族は、アメリカ合衆国アリゾナ州の非常に雨の少ない乾いた土地に暮らしています。厳しい自然環境と調和して生きていくため、彼らの間には、独得の精霊信仰が生まれました。精霊は「カチナ」と呼ばれ、この世のすべてのものに宿り、雨乞いの祈りを天に届けてくれると言われています。カチナの数は数百とも言われますが、限られた範囲での信仰であるため、謎が多く、すべてのことが明らかにされているわけではありません。
自然の中にある様々な精霊を表わすカチナは、毎年冬から夏にかけてホピ族の居住地にやってきます。人々はカチナを迎えて、様々な儀式をとり行います。男たちは仮面や特別の衣装をつけてカチナの姿を装い、踊り祈ります。儀式を通して、カチナの魂が男たちにのり移り、雲をよび、雨をよぶと信じられているのです。
そんな儀式を終えるとホピ族の男たちは、娘や孫に、精霊カチナの姿を彫った人形を贈りました。これがカチナ人形の始まりと言われています。子どもたちはこのカチナ人形を通し、ホピ族の自然観や信仰を学んでいきました。
カチナ人形が販売されるようになったのは、1880年頃と言われています。初期の頃は静的なイメージであったものが、徐々に躍動的な雰囲気を持つものへと発展し、現在の作品は、台座がつくなどして工芸化しています。
カチナ人形は、現在1号館で開催中の企画展「世界の仮面とまつりの玩具」でご紹介しています。