「ラトルウォッチ」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2008年7月

「ラトルウォッチ」

  • 1980~90年代
  • ドイツ・スロバキア・フランス/木

 ラトルウォッチ(がらがら時計)あるいはラトルトラップと呼ばれる鳴り物は、ヨーロッパ社会で古くから使用されてきました。歯車が一つあるいは複数作られ、持ち柄を手にとって、ぐるぐる回すと、薄い木の弁が歯車に当たってギリギリ、ガリガリ、けっこう大きな音を立てます。けっして、美しい音ではなく騒音という部類に入る雑音性に満ちた音色です。

 一世紀前の子どもたちは、これを振りまわし、大きな音を立てては鳥を追っていましたし、復活祭には、鳴らされない教会の鐘に代わって、子どもたちが振りまわすラトルウォッチの音が時計として時刻を知らせていました。

 さらに古い時代、中世から近世にかけて、ラトルウォッチは、夜の見張り番である夜警の持ち物でした。夜の街路を歩きながら音を立て、自分たちが見張りをしていることを町の人々に知らせていました。「安心してお休みなさい」と。もし、事件が起こったら、これを振りまわして大きな音を立て、警報を発するというわけです。ギリギリ……とやかましく鳴り響くラトルウォッチの音には、目に見えない悪霊を追い払う意味が込められていたのかもしれません。

 ヨーロッパだけではなく、これと同じ仕掛けを持った鳴り物は中南米やアジアでも作られています。中南米の国々では、これがカーニバルに登場します。メキシコでは「マトラカ」と呼ばれるこの鳴り物を手に手に、人々はカーニバルの賑やかな雰囲気を盛り上げていくのです。
 これらの玩具は、6号館で開催中の「音とあそぶ」展でご紹介しています。