「タオ(ヤミ)族の漁船のおもちゃ」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2007年8月

「タオ(ヤミ)族の漁船のおもちゃ」

  • 1960年代
  • 台湾/木

 台湾の南東に「蘭嶼(ランス―)」という名の小さな島があります。ここには、昔から周辺の海での漁猟を主な生業とするタオ族(ヤミ族)が住んでいます。

 タオ族の男たちは、太陽が没した後、潮の様子を見ながらトビウオの群れを求めて、手作りの漁船で太平洋へ漕ぎ出します。その船は、独特の文様によって飾られています。

 白い船体の周囲を黒と赤で何層にも埋め尽くしたおびただしい数のウロコ型文様は、魚を表現したものでしょうか。それとも海を図案化したものでしょうか。いずれにしろ、強い魔よけの力が感じられます。船首と船尾の丸い目は、彼らを守護する太陽を象徴し、黒く描かれる人物は、自然の恵みに感謝するタオの人々の姿を表しているといいます。   

 写真は、その漁船をまねて1960年代頃に作られた全長45cmの玩具です。かつてタオ族の父親たちは、漁を待つ手すさびに、壊れた船の廃材などを利用して、子どもたちのため、小さな船の模型を作りました。子どもたちは、父親から与えられた船で遊びながら、自分もまた、トビウオの群れを追って大海に漕ぎ出していくその日を夢見たのでしょう。

 美しい文様で飾られた小さな漁船には、太陽や海を大切に生きてきたタオの人々の誠実な心と、父親たちの仕事への誇りが漂っています。