「押絵の御殿飾り雛」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

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2007年2月

「押絵の御殿飾り雛」

  • 昭和初~10年代
  • 兵庫県姫路市/和紙・布・木

 高さ60cmほどの御殿の中に、押絵で作られた内裏雛と三人官女、随身が飾られています。
 「押絵」は、人物や花鳥などの形を厚紙で作り、これに綿を含ませて布を張ると、全体をまとめて半立体的な形を作っていく手芸の伝統的な手法です。奈良時代に中国から渡来したといわれますが、庶民の間で流行するのは江戸時代のこと。文化文政(1804~30)の頃には押絵の技法は発達し、羽子板にも盛んに使用されました。

 押絵が庶民に愛された江戸時代後期は、雛祭りの隆盛期でもあり、日本各地で押絵の雛人形製作が始まります。秋田県横手市、長野県松本市、福岡県久留米市などが有名で、それぞれに個性があります。

 兵庫県姫路市に伝わる押絵の特徴は、立体感に優れていることです。現在の姫路押絵と呼ばれるものの創始者は、姫路市立町に生まれた宮沢由雄(昭和19年に74歳で没)。京都で修行し、明治時代の中頃から自宅で作り始めました。技能に秀で、数々の優れた作品を製作し、のちには献上の栄にも浴します。

 ご紹介する押絵の雛人形は、宮沢の長女で押絵の技術者だった石田鶴子のお弟子さんの家族から、十数年前に寄贈いただいたものです。姫路押絵は、主として羽子板、衝立、色紙などを飾るものが中心なので、雛人形が作られていたとは驚きでした。

 押絵の雛人形は、一般的には掛け軸にさして飾ったり、台にさし飾ったりがほとんどですから、御殿の中にすえる飾り方は、関西ならではのもの。全国的にも珍しい資料です。
 この作品は、2月10日から始まる「雛の世界」でご紹介します。