初冬の宮崎訪問 | 日本玩具博物館

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学芸室から 2006.12.07

初冬の宮崎訪問

今秋、みやざき歴史文化館(宮崎市大字芳士蓮ヶ池公園)で開かれていた「世界おもちゃ紀行展」が閉幕したので、学芸員の笹竹亜子と一緒に撤収作業に出かけていました。当館が全面的に展示協力した企画展で、アジア、オセアニア、北アメリカ、ラテンアメリカ、アフリカ、ヨーロッパの6地域にわけ、各地の民芸玩具の特徴を紹介するゾーン、世界の国々に普遍的に見られるコマ、ヤジロベエ、けん玉、民族人形、仮面、乗り物玩具、ままごど道具をとりあげ、色や形の違いを取り上げるゾーンで構成するものでした。みやざき歴史文化館の担当者から、例年以上に子ども達の来館が多く、遊びのコーナーも大人気で、「帰りたくない」と訴える子どもも続出したと伺い喜んでいます。

みやざき歴史文化館で開催した「世界のおもちゃ紀行展」の様子
会期を終えての撤収作業の様子

総数400点をこえる資料を一日かけて梱包し終えた後は、車を飛ばして佐土原町へ出かけました。
佐土原町は江戸時代後期から続く土人形の産地です。最初は京都の伏見の影響下に人形作りが為されましたが、やがて博多から人形師を招いて作品にバリエーションが生まれ、大正時代初期の最盛期には、14箇所の窯元がありました。佐土原は、江戸や上方の文化が陸路と海路、双方を通して寄せられる町であったため、江戸時代中期より歌舞伎が盛んに行われ、様々な姿態の歌舞伎役者の人形たちが、古くから地元の人々に愛され続けてきました。

私達が訪ねたのは、西佐土原にある佐土原城址の佐土原人形展示室(鶴松館内)と窯元の「ますや」(阪本兼次家)です。今では、佐土原人形の窯元は、JR佐土原駅近くにある「陶月」と並んで、2箇所になってしまいました。佐土原では、幕末から伝わる土焼きの「型」が使われることもありますが、最近では量産化に対応して、ほとんどの人形が石膏型による鋳込み法で製作されています。ますやの阪本ご夫妻は、新春の干支・いのしし作りに大忙しの中、工房内を丁寧に案内して下さいました。

工房とそれに併設された売店、ショーウィンドゥ、いたるところに人形たちが並べられています。有名な饅頭(羊羹)喰い、歌舞伎物、雛人形、博多人形の型を受け継ぐ風俗物、それから干支の色々・・・・・・。

ますやで作られているキリスト降誕人形

―――――それらの中で、私達がびっくりして目を留めた作品があります。小さな桶の中に生まれたばかりの赤ん坊、それを見守る着物姿の男女、そして羊たち・・・・・・、これはまさしくキリスト降誕人形ではありませんか!
阪本さんによると、教会からの依頼で昨冬、試行錯誤しながら製作されたものなのだそうです。キリスト降誕人形(馬槽=プレゼピオ)の発祥地であるイタリアの教会で、世界各地のキリスト降誕人形を集めた展示会が開かれ、そこに日本からも民族色豊かな作品を展示してほしいという要望があったそうで、日本の教会が阪本さんの工房へ製作をもちかけたということでした。九州という土地柄、幼子に手を合わせるマリアとヨゼフの人形には、隠れキリシタンの風情が託されているのではないでしょうか。世界各地から今年も、ちらほら製作依頼が舞い込んでいるそうです。

和製キリスト降誕人形―――私達の信仰の場面で古くから飾られてきたものではないにしろ、見方によれば、非常におもしろい作品だと思います。当館の「クリスマス・コレクション」に加えたいと思い、製作をお願いしてきたところです。

(学芸員・尾崎織女)

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