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blog春のお客さま
◇旧暦桃の節句に合わせたように花桃も満開となり、いよいよ春爛漫。ツバメたちの帰還と入れ替わりに冬鳥たちが北へ渡っていきます。玩具博物館の庭をテリトリーに毎日元気に飛びまわっていたシロハラの“ぽんちゃん”も旅仕度です。
行き暮るる雲路の末に宿なくば 都に帰れ春の雁がね (兼好法師)
雲路の末に宿なくば、香寺町へ戻れ、シロハラのぽんちゃん!
◇ 日本玩具博物館は、雛人形展やちりめん細工展を求めて、次々とご遠方からのお客さまをお迎えしています。 春休み中には、郷土玩具を愛好する方々やちりめん細工の「つるし雛をつくる会」の方々、おもちゃを使った子育てのボランティア活動をなさっておられる方々など、趣味や志を同じくする皆さんが団体でお見えになりました。そんな折にはご希望によって展示解説会を開いたり、おもちゃのワークショップを催したり、また交流会を行ったりして、観るだけではない博物館の楽しみを共有します。それは、玩具の伝承や子育てや手づくり文化を担っておられる皆さんから、それぞれの分野の現状をお教えいただく機会でもあり、私たちとって意味深いひとときです。
◇過日は非常に懐かしい方の訪問を受けました。平成7(1995)年の阪神淡路大震災の年、日本玩具博物館は、家屋の倒壊や移転などによって手元に保存できなくなった被災地の節句人形をお引き受けする活動をさせていただいたのですが、その有り様について、また、それらの中から約30組の雛飾りを一堂に集めて開催した特別展「被災地からきた雛たち」についても、当時、新聞社やテレビ局各社から多くの取材を受けました。毎日新聞社大阪本社のN記者も数度、取材して下さり、特別展直前の掲載記事には大きな反響をいただいたと記憶しています。そのN記者がコラム執筆のため、20年ぶりに春の特別展「雛まつり」をお訪ね下さっ たのです。
日本玩具博物館の雛人形引き取り活動と春の特別展「被災地からの雛たち」開催について書かれています。尾崎も若いです!
現在の「雛まつり」展再訪について書かれています。
◇日本玩具博物館の「雛まつり展」、20年の歴史は、その「被災地からきた雛たち」から始まりました。節句活動の引き取り活動を通じて私たちが感じたのは、博物館が<私たちの町の収蔵庫>として機能することの素晴らしさでした。あそこには“あの”資料があり、大切にされ、次代に渡されていくのだという実感が大切な物を失った人々の心を支え、その安心と信頼感が町のアイデンティティ形成に少なからず力をたしていくということ。今回、20年ぶりに再会したN記者に再び取材を受けたその数時間は、私自身、学芸員としての原点をふり返るひとときともなりました。
(学芸員・尾崎織女)
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