タンポポの庭で | 日本玩具博物館

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学芸室から 2016.04.14

タンポポの庭で

今、玩具博物館の周りはタンポポの花の真っ盛り。西洋タンポポが勢力をふるう中、館の周りのタンポポは日本のタンポポです。種類はたぶん「カンサイタンポポ」と呼ばれるものではないかと思います。

カンサイタンポポかな?

歴代の花鳥画にタンポポ(蒲公英)の花はよく登場しますが、展示中の雛飾りにも小さなタンポポが見られます。
――――それは、江戸時代後期に作られた五人囃子が身に着けている衣裳の中に!!  長素袍の背や袖に定紋ごとく金糸でタンポポの縫取り(刺繍)がなされているのです。太鼓、大皮鼓、小鼓、笛の囃子方と謡で能楽を演奏する五人の童子たちは、海松茶色や利休鼠色の非常に渋い衣裳を着けているですが、そこにタンポポのデザインが愛らしさを添えていて、何か、作り手の優しさに触れる気がします。あるいは、タンポポは、江戸時代には「ツヅミグサ(鼓草)」と呼ばれていたらしいので、鼓をもってリズムを刻む能楽五人囃子にふさわしいデザインとも考えられ、そこは、作り手の遊び心を感じるべきなのかもしれません。

カンサイタンポポの花期は短くて、今がチャンス!と、親子連れの来館者や近所の子ども達と、時間をみつけて、タンポポの草花遊びをしています。タンポポとギシギシでお雛さまに仕立てたり、今日は、小さなタンポポの茎の風車を作りました。そうした春の野遊びを懐かしく想われる方も多いのではないでしょうか。

タンポポとギシギシのお雛さまのことは、<ブログ「学芸室から」2015年3月31日>で作り方を紹介いたしましたが、タンポポの茎の風車はもっと簡単です。茎を7~8cmほどをとり、両側から2~3cmずつ、いくつかに裂くと花びらのように反り返ります。反り返らない時は少し水にぬらして下さい。茎に細い枝などをさして息を送ると、風を切ってクルクル回ります。小川におけば水車に―――。なんということもない遊びですが、可憐な野原の営みをそっと次代に伝えていけたら……と思うのです。

(学芸員・尾崎織女)

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