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学芸室から 2015.03.31

久しぶりの郷土玩具展~富山県こどもみらい館へ~ 

タンポポのお雛さま

ひと月遅れの雛まつりが近づき、今年も草のお雛さまを作りました。タンポポの花を頭に見立て、ギシギシの葉の衣装を着せた素朴な草雛です。かつて播州の農村部などでは、桃の節句になると、子どもたちはお弁当を提げて野山へ行き、小川のそばでタンポポや菜の花やスミレなどの花を摘み、何対もの草雛を作りました。古代、中国から桃の節句が伝来したころ、草人形(ひとがた)を作って 水辺で身の汚れをはらう儀式が行われていましたが、素朴な草花のひな人形は、そんな大昔の風習を今に伝えるものかもしれません。

作り方はとても簡単です。ギシギシなどの葉を葉脈にそって折り、襟がきれいに見えるように5枚ほどを重ねます。そこへタンポポンの花を置き、ギシギシの葉を一枚ずつ、左から右から花の茎の上に着せ掛けていきます。

お花が十二単を着こんでいるようで愛らしい草雛です。ひと月遅れの雛まつりは、桃の花も開花して桃の節句本来の季節感にぴったりです。新暦3月3日が過ぎて、衣装雛を収納してしまわれたお家も多いと思いますが、今年は素朴な草のお雛さまで4月3日の雛まつりをなさってみてはいかがでしょうか。

富山県こどもみらい館行き「郷土玩具展」

さて、春のワークショップや春のライブなどが一段落しましたので、先週は富山県こどもみらい館(大型児童館)からご依頼を受けた「日本の郷土玩具展」の出品作業に没頭しておりました。ご依頼に沿う内容の玩具資料を先方の展示ケースに合わせて選定し、一点ずつ撮影してコンディションを記録した後、梱包してパッキングする作業です。
郷土玩具展の依頼は久しぶりのことです。ふり返れば、ここ数年、郷土玩具に対するまなざしが変化してきていることが感じられます。若い世代の人たちは、郷土玩具のまとまった世界が実生活から姿を消してしまった時代を経て、今、まるで異文化に出合うような新鮮さでもって郷土玩具の造形と対面されるのです。―――「とても愛くるしい」「斬新でポップなデザイン」「出合ったことのないかわいらしさ」――感想を伺うと、そんなふうにとても素直に表現されます。ある世代以上の方々が感じるような、お母さんが嫁入りの時に持ってきた飾り戸棚にぎっしり詰め込まれた土産物の土俗味ではなく、懐かしくも少し気恥ずかしさを覚える“昭和な世界”というわけでもないのです。

久しぶりの郷土玩具展準備

郷土玩具(当時は“手遊び”とか“手守り”などと呼ばれていました)が本当に生きていたのは、目に見えないものに対する人々の信仰心が篤く、いわゆる“まじない”とか“迷信”とかいった事柄が祖先の暮らしの中で大きな位置を占めていた近世的な時代においてのことです。そういう意味では、今、私達の手元に遺された郷土玩具はすでにその“こころ”の一部を失ってしまったものです。それでも、その造形が作り継がれていくというのには大きな大きな意味があることに鑑み、今回、ご依頼を受けた郷土玩具展を大切に用意致しました。郷土玩具の造形には、間違いなく、時を超えていく魅力があるのですから!

富山県こどもみらい館へ展示をお持ちするのは、①1996年冬の「駄菓子屋のおもちゃたち」②1999年夏の「日本のお面たち」③2000年夏の「子育ての祈りと願い~伝承玩具展~」④2001年夏の「日本のままごと道具の変遷」⑤2002年春の「世界をめぐる鉄道の旅」⑥2002年夏の「世界の玩具展」⑦2003年春の「世界の鳥の玩具展」⑧2004年春の「世界のからくり玩具展」⑨2004年夏の「世界の人形展」⑩2005年春夏の「イタリア・セヴィ社のおもちゃ展」以来、なんと11回目になります。そのような歴史がありますので、主だったスタッフの方々とは気心も知れ、親しみと信頼を寄せるお付き合いをさせてもらっています。今回、久しぶりの郷土玩具展が、富山の若い親世代の方々に親しまれ、愛されますように…。展示会期は来る4月25日から7月12日までが予定されています。

(学芸員・尾崎織女)

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