日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2022.10.16

地域実習の学生さんたち滞在の日々

今週の日本玩具博物館は、青山学院大学のコミュニティ人間科学部の「地域実習」にご協力して、学生さんたち6名と引率の先生をお迎えしていました。当館においては、博物館の成り立ちや館長&学芸員の話を聴いたり、日ごろの博物館活動を体験したり、また玩具博物館の周辺で地域文化の継承に取り組む人たちの姿に触れたりして、コミュニティづくりの基礎を学んでいかれるというプログラムです。

日本玩具博物館の歴史や活動について、事前に詳しく調査してこられた学生さんですが、1日目は展示室をめぐりながら玩具の世界の全体像を仕込んでいただき、2日目は、休館日を利用して2号館常設展示の目録作り作業を実習してもらいました。展示中の品々の塵埃を払い、撮影・採寸をし、一点一点目録に登録していきます。実際に資料を手にすることで、昭和10年代、太平洋戦争が激しくなるころの玩具の姿を観察し、社会情勢が子どもたちに及ぼす影響を一端を感じていただけたことと思います。朝は、展示資料に触れるということで、少々緊張気味の皆さんでしたが、それぞれの作業に馴れていかれたあとは、6人のチームで楽しく、丁寧な仕事ぶりでした。若い皆さんの展示資料に向き合う純粋で興味津々のまなざしが嬉しく、つい夢中になって眺めたり動きを確認したりする様子に接して、現代の若い人たちをも惹きつける玩具の力を感じました。

10月の日本玩具博物館は、コロナ禍のもとで大賑わいというわけではありませんが、校外学習のため、小学生たちの団体来館が続いています。小学生たちは、学校によって、ワークシート(クイズラリー)を手に展示館を回り、ご希望があれば、伝承玩具のワークショップを開いています。3校の校外学習が重なった「地域実習」4日目には、小学2年生たちに「風車」づくりのサポートに入ってもらいました。16世紀にはすでにヨーロッパで遊ばれていた素朴な形の風車です。子どもたちはお兄さんお姉さんとすぐに打ち解けて嬉しい笑顔。学生の皆さんにとっては、地域の学校と博物館とのつながりについて、何かを考えるきっかけとなっていればよいなと思います。

そして、5日目は玩具博物館を出て姫路市内へ。姫路文学館を準備委員会時代から支え、育ててこられた学芸員で、現副館長女史、それから城下町野里の町家再生に取り組んでおられるご夫妻を訪ねました。テーマは、施設や活動そのものというよりむしろ、夢をもって地域の文化継承に取り組んでいる方々の生の姿に触れるということといってもよいでしょうか。それぞれの方々が仲間とともに懸命につくってこられた活動の場で、来し方と今と夢の行方についてお話を伺いました。一日の終わりには、頭も心もいっぱいになってあふれそうな若い人たちの様子に接して、私の胸もいっぱいになりました。

地域実習を終えられた学生さんたちには、それぞれが感じた日本玩具博物館の魅力について、また課題についても、文章と画像や動画などで紹介いただくことになっています。個性豊かで、それぞれに関心が向かうところも異なる皆さんのレポートが届きましたら、本ブログやSNSにて発信させていただきますので、またぜひご覧下さい。短い期間でしたが、若い人たちの純真な感性が、私たちに新たな視点と力を与えてくれたように思えます。様々な世代が集う博物館の役割について、私自身もまとめてみたいと思っています。

(学芸員・尾崎織女)

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