日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2022.11.06

日本玩具博物館の魅力を発信!~当館で「地域実習」を終えた学生たちからのメッセージ・その2~

去る10月11日から4日間、「地域実習」のために当館に滞在された青山学院大学3年生の学生さんたちからのメッセージ・その2をご紹介します。実習2日目には、2号館の常設展「日本の近代玩具のあゆみ・Ⅰ~明治・大正・昭和~」の展示品目録を作る作業に当たっていただきました。展示品を直接手にとり、撮影したり展示したりする作業を体験するなかで、一歩展示品に近づく楽しさを知り、歴史や風土を表現する展示品の背景に心を留められたお二人のメッセージをどうぞ。(尾崎)     


昭和の世界を体験しませんか?

昭和20年代前半に作られたセルロイド製逆立ちピエロ(ゼンマイ仕掛けで動きます)——昭和20年代後半から30年代の玩具の展示を背景に

2021年に昭和の商店街をコンセプトにしたエリアを新設した西武ゆうえんちや、昨今の昭和レトロブームで「昔っぽい」ものが若者を中心に流行しています。
実際にお父さん、お母さんが遊んだものを見てみませんか?

今もあるリカちゃん人形ですが、実は昭和42年から少しずつモデルチェンジをしながら販売され続けています。

初代リカちゃん、瞳のなかに白い星が一つ。どこか淋しげな表情が特徴です

これを見るとリカちゃん人形がいた、ということだけでなく、「その頃の女の子の洋服はどのようなものだったのか」「流行っていた髪型はどのようなものだったのか」など、様々な生活文化が分かります。おもちゃを知ることは、その当時の文化を知ることなのです。

昭和30年代後半から40年代の玩具展示コーナー

この写真の右側中央にあるおもちゃは「夢の超特急」という名前なのですが、新幹線0系電車とは少し形が違います……なぜなのでしょうか?
——実はこのおもちゃは新幹線が出る前に発売されたのです。だから「夢の超特急」いう名前で発売されており、見た目が架空のものになっているのです。このおもちゃにはその時代の「みんなが新しい未来の乗り物の登場に夢を馳せている心情」がうかがえます。新幹線は人を運ぶ前から夢を運んでいたのですね。

ここに紹介したおもちゃは日本玩具博物館の昭和のおもちゃを紹介するコーナーのごく一部です。9万を超える様々な世界のおもちゃがこのようなストーリーを持っています。

昭和20年代、占領下の日本で作られたセルロイドとブリキ製玩具—鉄琴演奏家(ゼンマイ仕掛け)

「レトロブーム」を楽しむためにも、本物に触れて、遊んで、おもちゃの世界を冒険してみませんか? お父さんやお母さんが実際に遊んだおもちゃを知って、今のおもちゃとの違いに新しい発見を見つけてみませんか?(M.Sashide)


今戸の土人形を是非ご覧下さい!

今の東京都台東区今戸では江戸時代から瓦焼きの傍らで小さな人形が作られてきました。それらの容姿は多種多様です。花魁や福助など、人の形をしたものから、着物を着て正座をしている兎や狐など、動物を模したものまでさまざまな人形があります。色彩は白地に群青やオレンジがかった赤を基調とする塗分けが施されており、鮮やかな見た目が目を引きます。大きさも 10 センチかそれに満たないほどのものがほとんどで、ズラッと並べられている光景は非常にかわいらしいです。

ここで耳をまっすぐ上に立てた姿が特徴的な「月見兎」を見てみましょう。月と兎の物語は世界のあちこちで耳にします。日本でも古くから月の象徴として兎が描かれ、語り継がれてきました。と同時に月はその満ち欠けを繰り返すその姿から、女性の象徴としても捉えられてきました。この「月見兎」は、❝月のもの❞が正常でありますようにという願いをこめて、江戸の女性たちに買い求められていました。

今戸の月見兎

玩具、それも特に郷土玩具というものは、その時代のその地域に生きる人々の暮らしが刻まれた、いわば文化の写し鏡であると言われています。この今戸の土人形からも当時の人々の文化の一端を、垣間見ることができました。玩具を後世に伝えるということは、その地域の文化やアイデンティティを伝えることを意味するのだと思います。(H.Hoshino)

次号に続く>

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