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blogオアハカの木彫動物たち~「メキシコと中南米の民芸玩具展」より
●何年前のことだったでしょうか。ある男性が、飄々としてさわやかに「メキシコ・オアハカの木彫り動物を所蔵されていたら見せてくださいませんか?」と当館のアドレスにメールをくださいました。それから、しばらくして、ご来館があり、井上館長がメキシコの収蔵缶のふたを開けて、数点の動物たちをお見せしながら、どうしてメキシコの民芸玩具がたくさん当館にあるのかをお話ししたりしたようでした。メールの主は、岩本慎史さんといいます。
●メキシコ南部にあるオアハカは、スペインの入植を受ける前から木彫工芸が盛んで、植民地時代には、キリスト教の聖人像なども作られていたといわれますが、広く世界の民芸愛好家に親しまれる作品づくりが始まったのは、1950年代終わりのこと。オアハカ渓谷の小さな村・アラソラで、マヌエル・ヒメネスが農場の人物や動物を題材に、自らの暮らしのなかから木彫作品を生み出し、近くの街で販売を始めました。それが美術家の目に留まって高い評価を受けるようになると、次第に彼をまねて木彫に取り組み人々が増え、今ではアラソラ村に加え、近隣の村々でも独自の作品が作られるようになっていきます。当館は、ヒメネス作品は所蔵していませんが、1980年代から90年代にかけてのサンティアーゴ一家による作品を中心に40点ほどのコレクションがあります。
●岩本さんは、1980年代ころまでのオアハカ動物たちの造形のおもしろさと、アニリンという染料で色付けされていた独特の透明感に魅せられ、自身のコレクションを増やしつつ、これらを手元に置いて楽しんでこられました。現在、岩本さんは、ご本業のかたわら、オアハカの動物たちをテーマに本の出版に取り組んでおられ、当館もその本づくりにほんの少しご協力しています。そのようなご縁もあって、 当館にしては非常にめずらしく(お貸しすることは度々ですが、お借りしたことがありません…)、小さな特別陳列コーナですが、マヌエル・ヒメネス作品をはじめ、岩本さんの「ANIMALS FROM OAXACA」コレクションより20点を出品いただき、展示をつくらせていただきました! このコーナーの展示会期は2023年8月29日までです。
●現在のオアハカ木彫は、作家の個性の強いきらめきに圧倒されるような作品が多い印象をもちます。対して、20世紀のそれらは、前へ前へと出ていく造形ではありませんが、出合う人たちの心をとらえる魅力を内蔵しています。風土が育てた造形感覚にそれぞれの作者の自己表現がバランスよくプラスされ、一点一点を見つめていると、それらの生命感に愛おしさを覚えます。ご来館の折には、オアハカ木彫の世界にも触れていただきたく思います。ミュージアムショップには、岩本さん制作のステキなポストカードも置いています。こちらもぜひ!
●オアハカの木彫動物たちの本が出版されましたら、当サイトでもご紹介させていただきます。
(学芸員・尾崎織女)
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