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学芸室から 2025.06.28

京都精華大学ギャラリーTerra-S企画展「スケッチーズ~八瀬の石黒さん家から見た世界」に参加・出品協力しています!

6月27日から京都精華大学Terra-Sで開催されるユニークな展覧会「スケッチーズ~八瀬の石黒さん家から見た世界」が始まりました。尾崎は、展示企画の中心におられる美術家・中村裕太さんからお誘いを受けて玩具チームに参加し、去る25日から2日間、展示作業に出かけておりました。チームメイトは、敬愛するデザイナーの軸原ヨウスケさんや長友真昭さん、それから仏教美術の研究者にして郷土玩具蒐集家である山名先生。日本玩具博物館からは、各地の郷土人形を出展協力しています。

当館の場合、館内外のどちらで取り組んでも、展示企画‣広報‣実施‣総括……のプロセスは、館長+尾崎+助っ人による作業であることがほとんどだったのですが、本展では、中村裕太さん(美術家で京都精華大学の先生です)をはじめ、「スケッチーズ~八瀬の石黒さん家から見た世界」全体の企画者があり、5つのコーナーに取り組む多彩な皆さんがあり、そのコーナーのひとつ「玩具」をご一緒するデザイナーの軸原さん&長友さん、郷玩収集家の山名先生(同大学の先生です)が傍にあって、コンセプトを共有し、異なる視点をもつ方々とともに作っていく豊かさを満喫いたしました。

本展の玩具コーナーの一つ目には、軸原さんの企画によって、江戸後期に大蔵永常が著した≪『広益国産考』から考える伏見人形の転用と影響≫という展示を準備しました。ご存知のように大蔵永常の『広益国産考』(安政6・1859年に全八巻刊行)は、国富と民富を同時にもたらす道について考察した江戸時代の農業書です。そこに京都・伏見の土人形を元型として雌型をとり、それぞれの土地の良質の粘土によって人形を量産していく方法が提示されているのです。大蔵のススメもあって、全国各地に郷土人形の産地が誕生するわけですが、そのことを表現しようと全国の郷土玩具産地の系統樹(——私は原稿を担当し、軸原さんが綺麗なデザインにまとめてくださったのですが、廃絶した多くの産地をすべて入れ込むことが出来ず、それら産地の時代性と関係性をわかりやすくつなぐことに非常に苦労しました。不十分であることをどうかお許しください。――)とともに、桟付き板を並べた広い空間に、伏見人形の❝饅頭喰い❞を中心として各地の土人形を広げました。伏見人形には山名先生のコレクションを出品し、その他、補完的な童子物などの資料を日本玩具博物館のコレクションによってまとめています。

二つ目は、玩具コーナーの❝みそ❞で、『広益国産考』が薦める方法によって、陶芸家として売れなかった若い時代に饅頭を売っていたという石黒宗麿人形の創生過程をご紹介する展示です。これは、長友さんの心のこもった丁寧な手仕事です! 古人形の饅頭喰いから雌型をとり、そこから量産した饅頭売りの石黒宗麿人形は、帽子を被り、遠くをみつめる在りし日の石黒さん(写真でお目にかかれます)によく似ていますし、着物に石黒さんの陶片に用いられた模様を配したあたりも、とても気の利いた創作です。

玩具コーナーの三つ目には、ブログの前稿でご紹介した大原女や三宅八幡の麦藁人形に関するコーナーも設置していますので、昭和時代の作と令和時代の再現作を合わせてご覧ください。
そして、石黒さんのスケッチがゆるやかに結び合う「陶芸」「庭景」「集古」「建築」「玩具」、それぞれのコーナーをめぐりながら、「スケッチーズ」をお楽しみくださいませ。これからの人生にそれぞれのアート活動を展開していく学生さんや若い方々に郷土玩具のあり様に触れていただける機会ともなる本展、——ここに参加させていただけましたこと、玩具文化を未来へとつなぎたい日本玩具博物館にとってとても幸せなことと想っています。本展は、8月3日(開館時間は11時~18時/入場無料/日曜休館)までです!

(学芸員・尾崎織女)

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