日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2014.01.15

Hillaさんからの贈り物 

新しい年を迎え、皆さまにはますますご清祥のことと存じます。本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

今日は、私たちの古い友人で玩具研究家のHilla Schütze女史より、少し遅れてクリスマスプレゼントが届きました。Hillaさんとは、1994年よりドイツ・日本両国の郷土玩具を交換し合ったり、互いの国の玩具の歴史について学び合ったりする関係を続けています。わくわくしながら小包を開封すると、ドイツの冬の菓子・レープクーヘン(Lebkuchen)とともに、クリスマスらしいドイツの玩具や人形が登場しました。そしてその中からとても奇妙な古い木彫りの人形が現れました!

さて、“私はいったい何者でしょうか?!”―――“私は、古い“クルミ割り”の道具で、ドアーフ(伝説上の小さな人)を表したものです”
いつ頃、製作されたものか、どのような地方のどのような家庭で使われたものなのか、Hillaさんに問合わせ中ですが、いわゆるクルミ割り人形が誕生する以前、18世紀中頃には、木製玩具の古い町、ゾンネベルクあたりでこのような“クルミ割り器”が作られており、その系統をひくものと思われます。三点で支えられた脚の後ろ側を引き上げるとドアーフ(伝説上の小さな人)の口が大きく開き、そこにクルミを含ませると、後ろ側の脚を下へ引き下ろします。すると、ドアーフの口はカチリッと音をたてて堅いクルミの殻を割ってくれます(西洋胡桃は、日本で一般に市販されているカリフォルニア等から輸入されるクルミの実(種)より小さいものです)。

栄養価の高いクルミは、森の恵みを象徴するものとして、また、厳しい冬中にあって人々に滋養を与える食物として、古来、大切に扱われてきました。このことから、今でも、森の民・ゲルマン系の人々は、クルミを用いたオーナメントを作って室内に飾り、クリスマスをお祝いします。

ドアーフが“クルミ割り器”のモチーフになっているのは、ドイツ民話において、ドアーフが石工や鉱山職人などの職業を当てられていることとも関係があるでしょうか。クルミの堅い殻を割るという難事をも解決してくれると考えられたためではないでしょうか。このあたりについて、少し調べてみたいと思っています。

フュヒトナー工房(Füchtner Werkstatt)の古いクルミ割り人形
~『Spielzeugdorf Seiffen Erzgebirge(by Uwe Gerig, 1993)より~

今、知られているロクロ挽きのクルミ割り人形は、19世紀後半に、ドイツ木製玩具の三大生産地のひとつエルツゲビルゲ地方において始まったもので、1870年頃、ヴィルヘルム・フリードリッヒ・フュヒトナーがロクロ挽きの人形を仕上げたのが創始と考えられています。クルミ割り人形がドイツのクリスマスに結びついて広く愛されるようになったのは、作家E.T.A.ホフマンが描いたクリスマスの幻想的な夜の物語『クルミ割り人形とネズミの王様』によってですが、日本でも翻訳本やこれを優しくアレンジした絵本などもたくさん出版されているので、私たち日本人にとってもなじみのものとなっています。

ただ、ホフマンがこの童話を描いた1816年は、まだエルツゲビルゲ地方のロクロ挽きのクルミ割り人形は一般的ではなかったでしょうから、童話に登場するクルミ割り人形は、今回、Hillaさんからプレゼントしてもらった“ドアーフのクルミ割り器”のようなものだったのではないでしょうか。よい資料をお贈りいただき、とてもうれしく思っています。また、機会をとらえ、展示を通してご紹介させていただきます。

Hillaさんのご自宅に飾られている(尾崎がお贈りした)鳴子こけしとくるみ割り人形

―――― Hilla-san, Danke schön!           (尾崎織女)

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