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クリスマスの贈りもの
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*12月25日を過ぎると、急に歳末ムードが漂ってきます。けれど、キリスト教世界において、クリスマスは12月25日から1月6日までの12日間をさしており、この間、「キリスト降誕人形」や「クリスマスツリー」などもそのまま部屋に飾られます。クリスマスは日本の迎春行事と似た役割をも担っているようです。そんなことから、6号館の特別展「世界と日本のクリスマス」の会期は、今回も年越しで設定しております(今年は1月22日まで)。
*さて今年も、12月のクリスマス展会場では、恒例の絵本の朗読会や展示解説会、クリスマス・オーナメントのワークショップを開催し、好評をいただきました。
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*左の写真は「乳香(Frankincense)」です。私の従弟が出張先のイエメンよりお土産に持ち帰ってくれたもので、ソコトラ島産のもの。「乳香」といえば、「東方の三人の博士」が、「黄金」や「没薬(もつやく)」とともに ベツレヘムの幼子イエスに捧げたギフトとして有名ですが、実際、乳香は、古代エジプトでも古代ローマでも宗教儀式には欠かせなかったといわれます。ローマからインドへと航海する船は、乳香を求めて、ソコトラ島に立ち寄ったそうです。
*その 乳香というのは、いったい何かと調べてみると、ムクロジ目カンラン科の樹木から分泌される樹液が空気に触れて白濁し、凝固したものとありました。キリスト教においては、崇高な祈りを象徴する香りであると聞きます。
*イブの展示解説会には、「キリスト降誕人形」についてご案内しながら、「東方の三人の博士」の贈り物のひとつ“乳香”を、インド式真鍮の香炉で炷きました。キャンドルスタンドの温かい光がゆらめき、オルゴールが「きよしこの夜」を奏でる会場には、スギやモミの爽やかさとほのかな甘さがミックスされたような清々しい香りが漂い、参加者の皆さんとともに異国の文化を五感で感じるひとときが持てたと思います。
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*12月には、毎年、博物館と交流のある皆さまからクリスマスカードやクリスマスにちなんだプレゼントを頂戴します。昨年、展示解説会に参加下さった藤井芳子さんからは、ドイツの冬のお菓子をお贈りいただきました。藤井さんは、『ベレンで巡るクリスマス』(フランチスカ・ロビラ・カロル女史の“キリスト降誕人形”のコレクションを集めた暖かいムードのご本)の出版を手がけられた素敵な“クリスマス婦人”です。
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*シュトーレンは、もともとザクセン州ドレスデンの冬の郷土菓子でしたが、今やクリスマス時期になるとドイツ中のケーキ屋さんやパン屋さんで焼かれ、日本でもすっかり有名になりました。いただいたのは、北ドイツ・ハンブルグで1888年以来の伝統をもつベーカリー・ヴェーダマン(Back-Haus Wedemann)製の「バターシュトーレン(Butterstollen)」。ドイツでは、たとえば「シュトーレン」を名のるためには、その材料と分量が決められており、また、使われる材料とその割合によって、マジパンシュトーレン、クリストシュトーレン、マンデルシュトーレン、モーンシュトーレン、クヴァークシュトーレン…など、表示が異なるのだそうです。さすが物づくりの国。伝統を受け継ぐことにかけてとても真摯で、制度もきちんと整備されているのですね。バターの風味が豊かなヴェーダマン・ベーカリーのバターシュトーレン、スタッフみんなでかみしめるようにして美味しくいただきました。藤井さん、 ありがとうございました。
*また、11月に来姫されたH・シュッツェ女史からドイツの冬の伝統菓子・レープクーヘン(Lebkuchen)が届きました。ニュールベルグに1926年から店を構える老舗Schmidtのレープクーヘン。美しいブリキ缶入りの素敵な包装です。レープクーヘンは蜂蜜で練った生地にシナモン、アニス、クローブ、カルダモン、ナツメグなどのスパイスをきかせて焼いた濃厚な味わいの伝統菓子。オレンジピールや木の実、カカオなどで味わいのバリエーションもいろいろ。木の実いっぱい、スパイスいっぱいのお菓子を味わいながら、森の国・ドイツの人々がクリスマスに望むことについて、色と形と香と味で感じられたように思いました。シュッツェさん、ありがとうございました。
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*年内の開館は今日まで。本年も多くの皆様にたくさんお世話になり、学芸室一同、感謝いたしております。明日は、館内を大掃除し、新年を迎える準備を整えたいと思っています。冷え込みの厳しい年末です。皆さま、お身体ご自愛下さり、佳き歳をお迎え下さいませ。来年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
(学芸員・尾崎織女)
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