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blogヒラさんからの贈り物~クリスマスの“シュプリンゲルレ”~
◎この秋は、日本玩具博物館は、海外からのお客さまを幾人もお迎えしておりました。その中のお一人は、玩具博物館の18年来の友人で、ヒラ・シュッツさんです。彼女は童話作家にして、古い子どもの写真や民芸的な玩具の蒐集家。以前にこちらのページでご紹介いたしましたが、ドイツ中央バイエルン州バート・キッシンゲンに玩具博物館をオープンされたばかりです。ドイツと日本の民芸玩具や郷土玩具について、互いの資料や情報を交換しながら、私たちは、長く親しい交流を続けてきました。
◎10月、ヒラさんは、日独交流150周年の記念式典にご参加される旅程の中で、日本玩具博物館をご訪問くださいました。ヒラさんには初めての日本玩具博物館。館内を楽しげに、そして少々興奮気味にご見学下さり、日本の郷土玩具についてたくさんのお話をいたしました。また、姫路張子の松尾隆さんの工房を見学したり、大修理中の姫路城天守閣に登城したり、お面の絵付けや和菓子作りを体験していただいたりして、私たちも、ヒラさんと一緒にとても楽しいひとときを過ごしました。
◎遠い町からお客様をお迎えして、自分の職場や住み慣れた町のあちこちをご案内し、自分の友人や知人をたくさんご紹介するとき、自然にそのお客さまの目になり、自分の生活環境を見つめ直すことになります。あるいは、異文化に暮らしておられるお客さまからの様々なご質問にお答えすることで、普段まったく気付かなかったこと、当たり前と思っていたことでも、視点が違えば、とても大きな意味があることを知らされたりします。私にとって今回のおもてなしは、いつも以上に学ぶことがいっぱいの、素晴らしい機会となりました。
◎さて、ヒラさんは、今回、私たちがクリスマス展の準備中と知って、ドイツの伝統的なクリスマスオーナメントをお土産にお持ち下さいました。「シュプリンゲルレ(Springerle)」と呼ばれるビスケットのオーナメントです。これは精緻な模様が彫刻された木型に生地を押して作るもので、ヒラさんからいただいたシュプリンゲルレは、古城都市、ローテンブルク・オプ・デア・タウバーに伝わる古い木型によって復刻されたものです。シュプリンゲルレという名前は、「小さなジャンパー」あるいは「小さな騎士」を意味すると言われ、14世紀の南東ドイツあたりが起源であるとか。
◎繊細な模様がレリーフされたような真っ白な表面が特徴ですが、子どもたちがここに様々な色を塗りこんで、楽しいオーナメントに仕上げます。二つの穴に紐を通して、クリスマスツリーにつり下げるのです。
◎ヒラさんからは古い木型の復刻版と新しい木型も合わせてプレゼントしていただきました。古い木型に表れる絵柄は、聖書の物語からとられた宗教的なモチーフが多いようですが、17~8世紀には、騎士や貴婦人を紋章のように彫り込んだ木型が流行したようです。そのほか、幸福、愛情、豊穣、結婚などをあらわす象徴的な文様も好まれたといいます。
◎ヒラさんから頂戴したシュプリンゲルレとその木型は、6号館で開催中の特別展「世界と日本のクリスマス」の中、「お菓子のオーナメント」を集めたコーナーにご紹介していますので、ぜひ、足を止めてご覧ください。チェコのパン細工のオーナメントやセルビアのクッキーのオーナメントなども合わせてご覧ください。
◎お菓子の研究家・溝口政子さんのホームページには、このドイツ菓子にまつわるお話がご紹介されています。とても素敵なサイトですので、ご興味を持たれた方はこちらへもご訪問くださいませ。
http://www.m-mizoguti.com/ito/springelre.html
(※残念ながら、こちらのサイトは2020年2月現在、閉鎖されています)
◎さて、ヒラさんにはシュプリンゲルレの作り方も教えていただきました。木型がとても重要なので、木型なしではシュプリンゲルレは作れませんが、ドイツのお菓子がお好きな方には、何かアイディアを加えて、ドイツ風シュプリンゲルレをお作りになってみてはいかがでしょうか。
●材料=白い小麦粉250g、パウダー・シュガー250g、卵2個、2分の1個のレモンの皮を細かくすったもの、ベーキングパウダー小さじ1杯
●つくり方
①解いた卵にパウダーシュガーを加えて1時間よくかき混ぜ、そこによく篩った小麦粉、ベーキングパウダー、レモンの皮を加えて、木地が柔らかくなるまで混ぜ合わせます。
②1時間ほど冷えた場所に置き、生地をのばして木型を押します。
③ひとつひとつ切り取って、バターが塗られた天板に並べた状態でひと晩置き、低い温度で焼き締めます。
―――そのような過程をふめば、表面が白く焼きあがるそうです。
オーナメントとして使いたいときは紐を通す穴を開けて置くのをお忘れなく!
(学芸員・尾崎織女)
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