日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2018.03.06

春の特別展「雛まつり~江戸から昭和、雛の名品」が大好評

3月に入るのを待ちかねたかのように、当館の庭の春の花々が咲き始めました。とりわけ4号館から6号館への小道は花の道です。地面には真っ白なユキワリイチゲの花が咲き、椿、ロウバイ、マンサクなど、色とりどりの木々の花が咲きました。なかでも椿はこの小道だけで約30本も植わり、椿の小道と呼んでもおかしくありません。来館者から「展示品も、雰囲気もすばらしい。個人が設立された博物館だと聞いていたので、ささやかな博物館と思っていました。規模と内容に驚きました。来てよかったです」と、嬉しいお言葉を再三賜ります。6号館前の休憩所の感想ノートにも「こんなにすばらしい雛人形展は初めて。感動しました」との言葉が多数記されています。

ユキワリイチゲが満開
6号館への小道


3月3日が過ぎると、雛まつりが終わったと思われがちですが、旧暦の雛まつりは今年は4月18日です。3月3日だと桃の花も咲かず、季節感のずれもあり、当、播州地方でも雛祭りは1か月遅れの4月3日です。全国的にも雛まつりは4月3日に行われるところが多いと思います。当館の雛まつり展も4月15日まで開催中です。

ここ数年、町おこしの一環として、至るところで「雛人形展」が開催されるようになりました。しかしその多くが雛人形をピラミッドのように盛り上げて飾ったり、展示数を競うことが多くなったと思います。当館では博物館としての基本活動を守り、雛人形の歴史と変遷、それに江戸(東京)と京阪製の雛人形の形態や飾り方の違いなどについて、早くから展示を通して解説してきました。現在、当館の様な展示がなされている館は意外と少ないのではないでしょうか。

当館は現在、大小、500組を超える雛人形を所蔵していますが、開館当初、所蔵する雛人形は全国各地で庶民が飾った郷土玩具の土製の雛人形が中心でした。裕福な階層の家庭で飾られた雛人形の収蔵が始まったのは1995年の阪神淡路大震災以降です。雛人形が文化財として認知されず、救出されずに失われている状況を知り、救出活動に取り組みました。それが評価され、その後、続々と貴重な雛人形が届きました。といっても総てを受け取ることはできず、年代的には昭和初期までのものです。既に所蔵しているものは収蔵場所の関係もありお断りしていますが、この1年間でも貴重な資料の申し出があり、受け取ったものを展示しています。岡山からの大きな「見栄っ張り雛」、神戸からの「姫路押し絵の段飾り雛」、それにカナダからの「奈良の一刀彫の段飾り雛」です。どれもが貴重な資料です。

瀬戸内地方に見られる“見栄っ張り雛”
京都・大木平蔵の御殿飾り雛(左:明治後期・板葺御殿飾り、右:大正11年・桧皮葺御殿飾り)

当館の雛人形関係で特筆すべきものは、京都と大阪の著名な雛人形店である大木平蔵店と谷本要助店で明治時代から昭和初期にかけて売られた豪華な御殿飾り雛です。寄贈を受けて多数保存しており、今回も東室で7組を展示しています。


江戸期の貴重な雛人形も多数展示していますが、これらは寄贈ではなく購入資料です。時期に恵まれ、鑑識眼もあり、貴重な資料の収集に成功したのです。大型の享保雛、江戸の古今雛作者として有名な桃柳軒玉山の雛、また明治に入って東京から京都に玉眼の手法を教えに来た玉翁の雛人形など。今回の展示でもそれらがずらりと並び、珍しく貴重な数々の雛たちとの出会いに皆さま感動されるのです。

(館長・井上重義)

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