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館長室から 2015.05.26

全国から続々…「ちりめん細工の今昔」展に

当館の白壁土蔵造りの建物が、緑に覆われました。開館して40年。館内の庭に植えた木々が30数年の歳月で大きく成長したのです。私はできるだけ自然の趣を感じる庭にと考えてきたのですが、それが過密状態になり、その対策に悩んでいます。ただ、来館された方からは、この雰囲気が素晴らしいとお言葉を頂くことが多いのです。現在、4号館から6号館への小道に咲く、アメリカシャクナゲと呼ばれるカルミアの白い花が満開ですが、来館者から花の名前をと、聞かれることが再三あります。

カルミアの花

現在、6号館では6月30日まで特別展「ちりめん細工の今昔展」を開催中です。毎日のように、東北地方や関東からはるばるこの特別展をご覧になるために来館下さいます。今春の東京・目黒雅叙園での展示の影響もあり、「雅叙園で見て、ぜひ来たいと思っていました。本当に来てよかった」と嬉しいお言葉を大勢から頂きます。実は2011年末に日本ヴォーグ社から私の監修で発行された『ちりめん細工つるし飾りの基礎』も先月、14刷が出版され、輪が大きく広がっていることを実感しています。
私は40年ほど前に郷土玩具を収集する過程でちりめん細工の存在を知ったのですが、評価されることもなく、作り手もなく、すっかり過去のものになっていることに気付きました。以来、古作品の収集と30年前からは技術の伝承活動に取り組み、それが大きく花開きました。ちりめん細工の素晴らしさに気付かれた手芸の好きな方が全国から当館に集い、お互いに研究成果を発表しあい、成果を共有してきたことが大きな成果につながったと思います。


6月の当館ちりめん細工研究会での発表は、南尚代講師による『重陽の節句飾り』です。重陽は五節句のひとつで9月9日のことです。この日、邪気を払い長寿を願って、菊の花を飾ったり、菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わして祝われました。しかし現在、他の節句と比べて重陽の節句は忘れられた存在ですが、昔は五節句の中でも最も盛んだったと伝わります。その重陽の節句で飾られたのが、菊の花と秋に小さな実を付ける茱萸(しゅゆ)と呼ばれる植物でした。南講師はそれらをとり合わせて格調高い「重陽の節句飾り」を考案下さり、研究会で教えて下さることになりました。6月13日~15日まで、当館講座室で開催されますが、発表すると当館のちりめん細工研究会会員が東北、関東、中部、上越、関西、中国 、四国など全国から70名も出席下さいます。南講師は千葉県在住で、日本橋三越や日本ヴォーグ学園でちりめん細工講師として活躍中です。はるばる千葉から来館され、教えて下さいます。そして講座で習得された皆さんが全国で教えられ、輪が大きく広がっていくのです。

重陽の節句の茱萸袋

一昨日ですが、「ちりめん細工がこんなに素晴らしいものだとは思わなかった」と声をかけて下さった方がありました。お聞きすると京都から来て下さった方でした。残念ながら京都では、粗雑な中国製品が「ちりめん細工」の名で売られています。日本女性が作り上げてきた本物の「ちりめん細工」のすばらしさを知っていたく活動が、今後ますます大切だと痛感した次第でした。

明治時代制作の展示作品


当館では昭和61年以来、1号館を中心に2~3年ごとにちりめん細工展を開催してきましたが、この度の6号館での「ちりめん細工の今昔」展は規模や内容から、過去最高の展示になりました。西室には江戸や明治期の古作が、東室には当館がちりめん細工の復興に取り組んで以来、出版物に掲載された作品の数々が展示され、総数では1千点を超えます。この機会にぜひご来館下さい。

(館長・井上重義)

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