日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2013.05.25

企画展「日本と世界のままごと道具」によせて

青葉若葉の季節です。当館の建物群は緑にすっぽりと包まれました。といいますのは2・30年ほど前に植えた背丈ほどの木々のいくつかが大きく成長し、建物を超えるほどの高さに成長したからです。4号館から6号館への小道も緑のトンネル状態になりました。昨日からそのトンネルの入り口ともいえる4号館前に、5年前に植えたエゴの木が真っ白な可憐な花をつけました。

当館から南西に車で5分ほどのところに姫路バラ園があり、バラの花が見頃になってバラ園に来られた方が当館にも大勢来館下さいます。当館の庭はバラ園の華やかさとは較べようもないのですが、緑の中に咲くエゴの花やウツギの花に、「情緒がありますね」といってくださる方も多いです。

去る21日の閉館後に始まった、1号館の「イースターエッグ」の撤収作業と「日本と世界のままごと道具」の展示作業は順調に進展し、正式なオープンは6月1日からですが一昨日から来館者にご覧いただいています。当館での所蔵資料によるままごと道具関係の展示は、日本関係は2007年に「ままごと道具の今昔展」として開催しましたが、世界のままごと道具関係の展示は2003年以来10年ぶりの展示です。

大正~昭和初期のお茶道具遊び

展示はいつもどおり、尾崎学芸員の企画構成の指示に基づき完成しましたが、今回も豊富な資料を駆使したすばらしい展示になりました。展示資料が多いために2号館の一部も使い、展示ケースの延長は約24m。そこに約350種、点数にすれば千点を超える資料が並びました。確かに過密状態(笑)ともいえる展示ですが、解説も行き届き、ままごと道具の歴史がよく理解できる楽しい展示になりました。

世界のままごと道具では、食文化の違いや寄せる思いなどがよく解かり、約40ヵ国から集まった120種もの資料は、さまざまなことを私たちに語りかけてくれます。世界のものはアメリカやデンマークなどのプラスチック製のままごと道具なども所蔵しているのですが、今回の展示は土、木、金属製などの手作りのものが中心です。10年ぶりの出合いでしたが、その多くが現在では入手不可能です。よくぞこれだけのものを集めることができたと、私自身が感動しました。収集は何をどう集めるかといった方向性と時機が大切であることを改めて痛感した次第です。

中南米の国々のままごと道具

ままごと道具は女の子なら子供の頃、誰もが熱中した遊び道具ですが、これらが文化財として評価されることはなく、ままごと道具をコレクションしているという話は聞いたことがありません。

日本のままごと道具は、明治時代から平成初期までの膨大な資料を収集しています。特に昨年はままごと道具のメーカーであるダイワトーイ(八尾市)から申し出があり、昭和末期から平成初期までのままごと道具類約50点の寄贈を受けました。プラスチック製品が主ですが時代を反映した資料も多く、今回、約10点を展示させていただきました。

昭和40年代のままごと道具

嬉しいことにこの度、この「ままごと道具コレクション」が文溪堂から1冊の本に纏められ出版されることになり、近く撮影のために来館されます。文渓堂からは「ぶんけいの〈伝承遊び〉シリーズ」として、お手玉・独楽・凧・メンコなど、子供の遊びに係る本が出版されており、昨年11月には『お面』(監修=日本玩具博物館、文=井上重義)が出版され、当館のお面の数々が紹介されました。「ままごと道具」も同シリーズとして出版されるもので、尾崎学芸員が執筆します。当館のコレクションが1冊の本に纏められて出版されるのは3冊目で、コレクションが輝き始めました。

昨秋、文溪堂から出版された『お面』

(館長・井上重義)

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