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blog野原のままごと遊び
◎1号館の企画展「日本と世界のままごと道具」が予定の会期より一週間早く始まり、初日、館へやってきた近くの女の子たちに、私自身のままごと遊びの思い出を話していたら、“わたしもそんなんやってみたい!”というので、お昼休み、葉っぱや花を集めて、野原のままごとをして遊びました。柿若葉の折敷に卯の花をタンポポの散らし寿司、竹皮のお皿には紅ショウガとお漬物。近くの竹藪からハチクを2本抜き、デンデン虫まで参加して、彩りも豊か、野性味あふれる食卓となりました。女の子たちは楽しそうに花を摘み、“散らし寿司に海老を入れたいなぁ。ヘビイチゴが海老に見える!”“いいや、梅干しや!”とケラケラ笑いました。
◎子どもたちには大人たちが用意する玩具も大切だけれど、実は、こういう見立て遊びこそ大好きなものではないかと思います。四季折々、思いつきとアイディアは無限に広がります。どんな枠も一切、設定されていないから、遊びは自由自在。そして、これは大人になって思うことですが、自然物の持つ優しい色彩の記憶は、その人の美意識のベースをつくっているのではないかと。また、どんなにきれいに作ってみても、花や葉はしおれ、あっという間に今の姿を失っていく、その刹那的な世界に遊ぶことは、子どもの心に情緒というものを育てるのではないかと。
◎田舎育ちの私は、子ども時代、商品玩具のことは全く知らず、欲しいもののすべてが野山にありました。高度経済成長が始まらんとする時代でしたが、まだ地方には、子どもから子どもへの伝承遊びがたくさん残されていたように思われます。蕗の茎を1センチほどの厚さで輪切りにし、空洞になった茎の真ん中に摘んだ花を詰めて“巻き寿司”を作ったりしたことがとても懐かしいのですが、昭和52年に刊行された『別冊太陽~四季の草花あそび~』には、まさにその“巻き寿司”の写真が掲載されていて、胸がいっぱいになりました。蕗の葉の折敷に盛られた蕗の巻き寿司――――こうした伝承ままごと遊びの中には、実は、古い古い時代の、私の食卓の姿が保存されているのではないかと思われます。
◎皆さまにとっての懐かしいままごと遊びの思い出をお話し下さいませんでしょうか。何年頃、どこの地方でどんなままごとをして遊んでおられたか、もし、よろしければ、「ままごとの思い出」というタイトルで、こちらのメールアドレスへお便り下さいませ。
info@japan-toy-museum.org
このような伝承が絶えてしまおうとする今(もう、既に絶えてしまったでしょうか?!)、記録をとっておきたいと思うのです。「学芸室から」のコーナーで皆さまのお便りをご紹介してみたくも思っています。
(学芸員・尾崎織女)
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