日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2006.11.10

「開館満32年を迎えて」  

当館が開館したのは1974年11月10日。本日、開館満32年を迎えました。
私は1963年に『日本の郷土玩具』という一冊の本と出会い、庶民の文化財とも言えるモノが忘れられている現状を知り、後世に残す必要を痛感して勤めの傍ら各地を歩き収集しました。凧の収集で立ち寄った大分県豊後高田の提灯屋で「大英博物館から凧の注文を受けたが国内の施設からはない」と聞き、各地の博物館や資料館を見学しても玩具や人形が博物館資料として認知されていない状況を知りました。評価を高めるには公開する施設が必要だと考えて、新築した自宅の一部47㎡を展示施設に、日本の郷土玩具5千点を資料に井上郷土玩具館としてスタートしたのです。

井上郷土玩具館(1974年)

以来32年、1984年には将来を見据えて日本玩具博物館と改称しましたが、現在、その名に恥じないものになったと考えています。施設は6棟約700㎡、コレクションは世界150カ国8万点になり、玩具博物館としては規模内容からも国内の施設を代表するものと認知され、世界でもトップクラスになったと自負しています。個人立である小回りのよさを生かし、一貫した方針のもと、よきスタッフに恵まれたことが大きな成果に繋がったと考えています。

設立以来、私は博物館にとっての生命はコレクションであると考え、資料の充実を計ったのが「正解」でした。保存や公開を重視する当館のような博物館は旧世代の博物館であり、新世代の博物館は参加型で最新式の展示技術を駆使した施設であるべきだと考えられた時期もありました。しかし立派な体験設備を持ち、最新の展示技術を駆使したいくつかの豪華な博物館を見てきましたが、来館者も決して多いとはいえず、私は虚しさを感じました。

最近、コレクションに加わった三十六歌仙の押し絵箱

世界の人々が子供の健やかな成長を願い、長い歳月をかけて創りあげてきた玩具や人形は、単なる子供の遊び道具ではなく、各民族の歴史を背負った大切な文化遺産です。その色や形は悠久の歴史や民族の心を表現し、来館された大人も子供たちも、玩具や人形を前にして、想い、憩い、疲れを癒されている姿を目にすると、このような博物館を創った喜びを感じます。
博物館を取り巻く状況は、指定管理者制度の導入や、入館者の増加のためには何でもありという状況を目にすると、将来に大きな不安を覚えます。私は博物館の最大の使命は、人類の文化遺産を収集し保存し、後世に伝えることにあると考えています。これからも当館は来館者がモノと出会い、感動を与える場でありたいと考えています。

現在は来春出版される『ちりめん細工 傘飾り』(日本ヴォーグ社)と、たばこと塩の博物館との共催により、東京渋谷の同館で来年2月10日から開催される「ちりめん細工の世界」展に向けて頑張っています。

開館満32年を迎え、今後とも変わらぬご指導とご支援を、心よりお願い申し上げます。

(館長・井上重義)

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