日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2006.08.03

「ちりめん細工の世界」展の傘飾り

8月10日~21日まで大阪の京阪百貨店守口店7階ギャラリーで朝日新聞社主催による「和の布あそび ちりめん細工の世界」展が開催されます。展示品は当館所蔵の新旧あわせて約600点のちりめん細工です。当館では30年前から女性の伝統手芸であるちりめん細工が伝える世界の 素晴らしさに気付き、江戸や明治期に作られた数々の作品や文献資料を収集すると共に、20年前から技術伝承のための研究会や講習会を開催して、復興に本格的に取り組んできました。長年の地道な活動が実を結び、地方の小さな博物館が取り組んできた活動が手芸の世界に大きな波を起こし、その輪は全国に広がっています。

ちりめん細工が今後さらに暮らしの中に根を下ろすには、その歴史をたどると共に、作品一つ一つに込められた意味や、造形的な工夫や知恵を押さえる必要があり、「ちりめん細工の世界」展はそれらを大勢に認識いただく絶好の機会だと考えています。
さらに私はこれまで、ちりめん細工を暮らしの中に活かすためのさまざまな飾り方を考え、出版物などで発表してきましたが、この「ちりめん細工の世界」展では、「ちりめん細工の傘飾り」を当館ちりめん細工講師や研究会員の協力を得て製作し展示いたします。

傘飾りは、傘にちりめん細工を吊るして飾るもので、山形県酒田市の本間美術館に「傘福」と呼ばれる傘飾りが所蔵され有名です。しかし庄内地方で雛の季節に一般家庭で傘福が飾られる風習はなく、有名になったのは本間美術館の雛人形と共に傘福が紹介されたからです。伊豆の稲取や福岡県柳川の雛の吊るし飾りの影響を受け、今年から酒田でも「傘福」が町おこしの目玉として登場、私も実際に庄内を訪れて傘福を調査しました。確かに華やかで豪華な傘福は目を引きましたが、作品の完成度にも問題があり、稲取の吊るし飾りを参考に作られたという印象を受けました。

当館では、傘は「末広がり」でお目出度く、また、傘の略字の「仐」が八十に見えることから長寿の祝いとして使われ、祭りの山車にも傘を飾る「傘鉾」があることから、傘を利用した独自のちりめん細工の下げ飾りに取り組み、日本玩具博物館版の素晴らしい傘飾りが完成しました。それらを「ちりめん細工の世界」展でご覧いただきます。日本女性が創り上げた、ちりめん細工の素晴らしさを再認識いただける場になれば幸いです。

約90名から寄せられた作品を製作メンバーが配置を考え、傘に吊るして完成しました。

(館長・井上重義)

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