日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2012.06.02

夏の展示準備が始まりました

館のまわりで大きく豊かに枝を広げた栴檀(せんだん)の木々が、薄紫色のフラワーシャワーを降らせ、あたりの田圃ではお田植えの準備も始まっています。雨の季節もまもなくですね。この季節につきものなのが、晴天を祈る“てるてる坊主”。子どものころから当たり前のように親しんできた“てるてる坊主” ですが、結構、古い歴史をひめていることをご存じでしょうか。

中国には、昔、箒(ほうき)で雲を掃いて晴天をもたらす“掃晴娘(ソウチンニャン)”と呼ばれる紙人形がありました。白い紙の頭に青と緑の着物をまとい、植物を束ねた箒をもった姿で表現されるものですが、この“掃晴娘”は、降り続く雨で水没しそうになった町を、自らを犠牲にして救った美しい娘の伝説と結びついているともいわれています。江戸時代の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(喜多村信節著/文政13年頃)という書物には、雨天を晴天に変える力をもった「中国の“掃晴娘”が日本に伝わり、“てるてる坊主”になったのではないか」と書かれています。
江戸時代の“てるてる坊主”は“照々法師(てるてるほうし)”と呼ばれ、“掃晴娘”と同じように、雨が止むよう願をかけ、庇(ひさし)などにつるされていました。“照々法師”の顔には目鼻はなく、願いをかなえてくれたときにだけ目が描き入れられたそうです。天気予報が非常に正確な今日ですが、“てるてる坊主”を作って庇につるし、願いをこめてじっと空を仰ぐ……そんな心も忘れず、子どもたちに伝えたいですね。


学芸室では、只今、他館からのご依頼を受けて出張する資料を整える作業も進めています。今夏は、企画ごと資料を持ち出す大がかりな展示はお受けしておらず、3館の企画特別展に資料出品の形でご協力いたします。
南丹市立文化博物館(京都府)の夏季企画展「戦争展~平和な世界を目指して~」(7月14日~9月17日)に、太平洋戦時下の玩具のいろいろを、ミュージアムパーク茨城県自然博物館の夏季特別展「不思議いっぱい貝たちの世界」(7月7日~9月17日)に、貝を使った玩具のいろいろを、それから福井県立歴史博物館の「玩具の100年~玩具でたどる明治・大正・昭和」(7月21日~9月2日)には、明治から昭和のままごと道具のいろいろを出品いたします。先日は、福井県立歴史博物館から担当の学芸員女史とカメラマン氏をお迎えし、一日がかりで図録に掲載されるままごと道具の撮影作業が行われました。玩具資料をコレクション群として所蔵していることで、このような協力が可能となっています。

福井県立歴史博物館の『玩具の100年~玩具でたどる明治・大正・昭和』に協力して

このように、各地の博物館施設で夏に向けての展示準備が始まっていますが、日本玩具博物館でも夏の企画展「幻の神戸人形」と特別展「世界の鳥のおもちゃ~形と色と音色~」の展示準備の真っ最中。

来週は、職業体験にやってくる地元の中学生たちを迎えて、まずは1号館の企画展を準備します。この企画展では、新たにコレクションに加わった明治中期から昭和初期の資料を中心に“神戸人形”をめぐる100年の歩みをご紹介いたします。港町神戸が育んだからくり人形の奇知と工夫と作者の自己表現を、存分に楽しんでいただける内容に仕上げたいと思いますので、どうぞご期待下さい。

(学芸員・尾崎織女)

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