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学芸室から 2011.12.02

「世界のクリスマス飾り展」~ロシアの雪娘~ 

すでに十数年前、当館が開館以来お世話になっていた旧ソ連の民芸品の輸入業者さんが会社をたたまれたあと、ずいぶん寂しく思っておりましたところ、ご縁があって、あらたにロシアの木製人形などを扱われる方と巡り合うことができました。先日も、クリスマスに関するものなどを入手することが出来、ありがたかったのですが、その中に、かねてより入手したいと願っていた入れ子細工の人形が含まれていて、嬉しくなりました。
探していたものは、旧ザゴルスク(現在のセルギエフ・パサド)あたりで作られている “マロース爺さん”と“雪娘スニェグーロチカ”です。旧ザゴルスク(現在のセルギエフ・パサド)は、“マトリョーシカ(かつてロシア農村部で一般的だった女児の名前)” で有名ですが、入れ子細工の人形になった雪娘は、マトリョーシカと同じぐらい可憐で愛らしいものです。


地域や時代や政治体制などによって異なるのですが、現在、マロース爺さんは、ロシアにおいては、ヨーロッパの聖ニコラウスやアメリカのサンタクロースと同一視されるクリスマスの贈りもの配達人です。
マロースは、雪娘スニェグーロチカの協力を得て、子どもたちのもとへ贈りものを届けるのです。マロースとは、“冬将軍(クリスマス寒波)”のこと。ロシアの農村には「マロースが訪れて寒波に凍りついた翌年は大豊作に恵まれる」 というジンクスがあり、クリスマスにやってきてほしい“大寒波・マロース”を擬人化して、 “マロース爺さん”が誕生したといわれます。つまり、マロース爺さんが届けてくれる贈りものとは、新年の大豊作、あるいは豊かな暮らし、ということでしょうか。

では、ロシアの民話によく登場する雪娘スニェグーロチカとは どういうキャラクターでしょうか。民話の書籍などをあれこれ調べていたら、 リムスキー・コルサコフのオペラ『雪娘』にたどり着きました。
このオペラは、アレクサンドル=オストロフスキーの同名の戯曲が原作。物語はこうです。

・・・・・・・“霜の精”と“春の精”の間に生まれたスニェグーロチカは、 “恋”を知りたいと願ってベレンデイの国を訪れ、人間たちと暮らし始めます。美しい彼女の登場は人間世界にたくさんの波紋と騒動を巻き起こしますが、 やがて、スニェグーロチカは願っていたとおり本物の恋を知ります。
ただ……恋を知ったことで、スニェグーロチカは溶けて無くなってしまうのです。・・・・・・

クリスマスの絵本の中では、雪娘スニェグーロチカは、マロース爺さんと一緒にクリスマスの贈り物を運ぶのですが、この戯曲をはじめ、様々な民話に登場する様々な雪娘は、結末にはいつも溶けてしまう。冬を象徴する雪娘が消えて、春(夏=太陽の季節)がやってくる。死と再生の節目に立って、雪娘は、それぞれに愛らしくもユニークな存在感を放っています。 リムスキー・コルサコフのオペラ『雪娘』を聴いてみたくなり、仕事の帰り、いきつけのCD屋さんで取り寄せをお願いしてきました。 リムスキー・コルサコフといえば『シェラサード(Scheherazade)』ぐらいしか知りませんが、 『雪娘(The Snow Maiden)』はとても素晴らしい作品なのだそうで、 早く聴いてみたくて仕方ありません。

マロース爺さんと雪娘スニェグーロチカは、さっそく“クリスマスの贈りもの配達人”のコーナーに展示いたしましたので、ご来館 の方はどうぞご覧下さい。
特別展*世界のクリスマス飾り               (尾崎織女)

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