ドイツからのクリスマス・プレゼント | 日本玩具博物館

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学芸室から 2010.12.21

ドイツからのクリスマス・プレゼント

Frohe Weihnachten! Merry Christmas! 曇り空の寒い朝、私の机の上にドイツからの小さな包みが届いていました。差出人はヒラ・シュッツさん! ヒラさんは、以前にも(<ブログ「学芸室から」2005年6月27日>)ご紹介させていただきましたが、15年来、日独両国の玩具や人形について、資料や情報を交換しあってきた私たちの大事なミュージアム・フレンドです。クリスマスカードとともに届けられたのは、聖ニコラウス・デーのブーツと、『聖ニコラウスのミラでの伝説』について書かれた絵本でした。

ヒラさんから届いた聖ニコラウスのブーツ

ヒラ・シュッツさん、いつも、夢のある贈り物をありがとうございます! 彼女は、来年5月13日、バート・キッシンゲンの町に小さなおもちゃ博物館を開く計画で、現在、ご準備中なのだそうです。オープンの暁には、日本からのお客さまにもたくさん訪ねていただきたいと思います。

ヒラさんによると、聖ニコラウス・デーの前の夜、つまり「12月5日の夜、ドイツの子どもたちは、部屋のドアの前にこのようなブーツを置き、聖ニコラウスがこの中いっぱいにプレゼントを詰め込んでくれるよう夢見ながらベッドに入る」そうです。 やわらなか羊毛から手作りされたブーツは、先がとんがっていて、メルヘンの世界に登場する妖精の靴のようです。

ご存じのように聖ニコラウスは、今、世界で活躍するサンタクロースのモデルとなった人物。紀元280年頃、小アジアのローマ帝国パタラの町に生まれ、のちに偉大な大司教として多くの人々から敬愛を受けました。無実の罪で囚われの身となった人を救ったり、貧しい家族や子どもたちに施しを行ったり、また漁師たちを海難から救ったり……と、様々な伝説が残されています。この聖ニコラウスが弱者に贈り物を届けたり、困っている人に金貨を授けたりしたという伝説と、古い時代より伝わる冬至祭の贈り物交換の習慣が溶け合って、聖ニコラウスが没した12月6日(あるいは5日の夜)にプレゼントを運ぶ聖人の物語が定着していったといわれています。
セントニコラウス→ジンタクラウス(オランダ語)→サンタクロース(アメリカ合衆国で創出された名前)と、国により時代によって名前が変化しても、やがてプレゼントの日が違っても、クリスマスにおける贈り物は、これからも、聖ニコラウスの伝説とともに受け継がれていくのでしょう。

スロバキアの聖ニコラウスのきびがら人形(スロバキアでは聖ミクラーシュ)

中沢新一氏は、『サンタクロースの秘密』の中で、クリスマスを“贈与の祭り”とし、ヨーロッパにおけるかつてのクリスマスは、“死者の霊と生者の間に贈与の連環を創出するための儀礼“でもあったと書いておられます。あるいは、“神が人間に救世主を贈与したことを祝う祭り”であると。ところが、サンタクロースの登場によって、クリスマスが、“生きている者同士による贈与の祭り”に変化していったと指摘しておられます。きっとそうなのでしょう。けれど、私たちの国に「お歳暮」があるように、新年には「お年玉」があるように、一年のカレンダーが終息して、また新たに何かが生まれ変わるこの時期、「モノ」にのせて人の心を動かし、世の中に目に見えないものの循環をつくりだしていく必要性を、私たち自身、心のどこかで感じているのではないでしょうか。新たな年が、物質的な豊かさをこえて、心豊かな日々であるように。幸せな世の中であるように…。

残り少なくなった2010年、12月の日本玩具博物館では、「クリスマス・プレゼント」をテーマに、クリスマス絵本の朗読会解説会を開きながら、同じキャンドルの灯を囲んで、ご来館の方々と心愉しい時間をご一緒させていただいております。

クリスマス絵本朗読会の様子
展示解説会でのこどもたち

皆様、今年も、物心両面にわたり、多くの贈り物を与え続けて下さりありがとうございました。贈られたものを返していけるようスタッフ一同、来年も頑張ってまいりたいと思います。どうぞ、お身体ご自愛下さり、暖かい年末年始をお過ごし下さいませ。

(学芸員・尾崎織女)


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