たくさんの寄贈資料に囲まれて・・・ | 日本玩具博物館

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学芸室から 2010.08.12

たくさんの寄贈資料に囲まれて・・・

日本海を進む台風の雨が心配されましたが、播州地方は暗い雲に覆われた程度。3時を過ぎた頃には青空も見え、館の周囲の林からクマゼミやアブラゼミが賑やかな合唱が聞こえています。いつの間にか「盆帰り」の季節。館内には、三世代で来館されるご家族、仏花を携えたご家族の姿も目立ち始めました。夏休みも後半に入りましたが、皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。

今春から夏、日本玩具博物館は、5つの大きな玩具コレクションの寄贈を受けました。学芸室では、そのボリュームの大きさに驚き戸惑いつつ、収蔵場所の確保に途方に暮れつつ、少しずつ収蔵登録を進めています。一つは、昭和初期から10年代のミニチュア玩具コレクション(約100組)、もう一つは、昭和初期の上方趣味人たちの間で交換された絵葉書集(約3000枚)、あとの三つは、すべて郷土玩具のコレクション(全体で約1000点)です。


今、私が収蔵登録中のコレクションは、故・T氏(岡山県)が精力的に蒐集された全国の郷土玩具、約500点です。T氏が夢中で集めておられた昭和30年代から40年代頃の作品はもちろん、戦前(昭和初期~10年代)に作られた土人形や既に廃絶して久しい産地の資料なども数多く含まれていて、整理しながら、私自身、よい勉強になっています。

九州、四国、中国、近畿、東海、中部、甲信越、関東、東北…と大まかな地域に分けたら、コンディションを点検し、産地や材質、項目ごとに分類して「日本玩具博物館収蔵品カード」の中に必要事項を書き込んでいきます。一点につき一枚のカード。そこには、製作年代や製作者、方量(寸法など)画像、入手の経緯、入手日、登録日、特記事項などを明記します。玩具一点一点に作るカードは、将来に向けて、病院のカルテのような役割を果たします。

日本玩具博物館収蔵品カード

博物館で収蔵登録を終えたモノが価値をもつのは、そのモノが「保存」の対象になるから。つまり、今を生きる私達だけではなく、未来に生きる人たちに向けて存在を約束されたものになるからです。博物館の資料とに私達が特別の敬意を払うことは、未来へ文化を伝承することだと思います。

故・T氏のコレクション・・・・兵庫県養父市の葛畑土人形など・・・。

それにしても、日本の郷土玩具がずらりと集まると、カラフルです。日本各地の都市部や農村で、暮らしの中から誕生し、日本庶民に育まれた造形物が、非常に明るい色彩をもっていることは、他国の趣味家たちの注目をひく点でもあります。郷土玩具一点一点の彩色を見ていくと、青、赤、黄、白、黒の五色が欠かせません。この五色は、中国に端を発する自然哲学「五行思想」につながるものと考えられるでしょうか。―――すなわち、万物は、木・火・土・金・水の5つの元素から構成され、この5つの元素の盛衰生滅によって万物が変化し循環するという考え方。 木・火・土・金・水が、それぞれに春・夏・変わり目・秋・冬という季節を表わし、東・南・中央・西・北の方角をも象徴します。さらに、この5つは、青・赤・黄・白・黒の五色にも対応していますので、5色を使って彩色されたものは、私達が生きる世界そのものを表現して、それらが身近にあるとき、招福の力を発揮すると近世の人々は考えていたようです。

故・T氏のコレクション・・・・山形県相良土人形(明治末期)

郷土玩具の色とりどりは、ただ美しさや明るさを求めたからではなく、例えば、5色の力によって、これらを傍に置く人の魔を除き、幸せを呼び込むことが出来ると、私達の祖先は感じていたはずです。

学芸室の8月は、たくさんの寄贈資料に囲まれて過ぎていきそうです。亡きひとの生涯の思いがこもった品々を、私達の博物館を選んでお寄せ下さったご遺族の方々のお心を想い、大切に整理を進めたいと思います。新しく受け入れたコレクション群の整理が完了しましたら、こちらのページでも、また館報でも順次ご報告し、機会をとらえて展示の中でご紹介してまいります。

(学芸員・尾崎織女)




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