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学芸室から 2007.04.27

たばこと塩の博物館*「ちりめん細工の世界」展からのプレゼント 

4月は、たばこと塩の博物館に出向いての「ちりめん細工の世界」展の撤収作業と資料到着後の収蔵作業、同時併行で6号館の「端午の節句飾り」の準備作業…とめまぐるしく過ぎ、今、学芸室はほっとひと息ついたところです。

とりわけ賑やかだった会期最終日の展示室

「ちりめん細工の世界」展は、企画、印刷物の用意、展示構成、シミュレーションと梱包、キャプションなどの製作、講演会の準備など学芸室での作業に加え、ちりめん細工講座の材料セットやミュージアムショップ向け商品の手配など、たばこと塩の博物館のスタッフと当館のスタッフ全員が一緒になって懸命に取り組むことが出来、私たちにとって思い出深い展覧会となりました。「10年ぶりの東京での展示が、よいものにならなかったらどうしよう…」と内心、あれこれ心配にも思い、重い責任を感じ続けてきただけに、肩の荷が下りた気分でもあります。

<ブログ「館長室から」2007年4月25日>で井上館長がご報告させていただいたように、来場者数において、非常によい成績を残せました。そのことはもちろん、有り難いのですが、終了後に関東方面の方々から頂戴するメールや電話などの内容が私たちを喜ばせています。
 「母の思い出につながる懐かしい世界と再会でき、涙がこぼれました。」
 「展示室で見たものを全部、この目に焼き付けておきたいのに、そう出来なくて、それが辛いぐらいです。今度はいつ見られますか?」
 「会期中に7回も訪ねてしまいました。いくら見ても、作品のひとつひとつが新鮮で、何度訪ねても、違った感動がありました。」
 「日本女性の美意識を再確認でき、誇らしい気分になりました。伝承の模様とか形とかを暮らしの中に取り入れていきたいです。次の展覧会はいつですか?」

「うわ~、きれい!」と来場者からいつも歓声があがっていた展示室の様子

そして、私が個人的にもっとも嬉しく感じたのは、講演会に参加して下さった60代の女性から、こんな風に声をかけていただいたことです。「何にも興味が持てなくて、鬱々とした毎日でしたが、この展覧会を訪ね、講習会にも参加して、ずっと心の底で願っていたものに巡り合えた!と思いました。古い作品に込められた形の意味を学びたいし、これからやりたいことが目の前にいっぱい広がってきて、私の人生が変わりそうです!」という言葉。展覧会主催者にとって、これ以上に嬉しい言葉のプレゼントがあるでしょうか。

会期中に行われた講演会「ちりめん細工の形と心」の様子

今、日本の博物館では、展覧会の評価を来館者数のみによって行う傾向がまだまだ根強いのですが、いかに来館者の心を動かし、どのぐらいの大きさでその人の人生に影響を与えられたかということが、来館者数の大きさよりも、もっと重要で意味の深い、展覧会への評価づけだということを私たちは確認し合いたいと思います。そして、博物館の展覧会活動が他の施設のそれと異なるのは、20年先、50年先、100年先の来館者に対しても、それ以上の意味をもたせなくてはならない、という点です。そのためには、今、美しい資料が出来るだけよい状態で保存され、後世に伝えられなければならない。これが、言うは易く、非常に難しい課題です。

さて、今回「ちりめん細工の世界」展のために、たばこと塩の博物館にお願いして造作してもらった展示台(高さ×奥行×全長=30×30×150cm)の16基を私たちは、本展の記念に頂戴することが出来ました。ちりめん細工展に合わせて、黒いクロスを貼ったものですが、ただ今開催中の「端午の節句飾り」では、深緑色のクロスをかけてさっそく全基使用しています。とても美しい展示台で、当館の展示ケースのサイズにもぴったり。夏の「世界の国の人形展」に、秋冬の「世界のクリスマス展」に……と末長く、活躍してくれることでしょう。展示担当の私にとっては、これも非常に嬉しいプレゼントでした。

(学芸員・尾崎織女)


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