夏休みが終わって | 日本玩具博物館

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学芸室から 2006.08.31

夏休みが終わって

夏休み、播州の田舎にある当館は、祖父母のもとに帰省された家族連れの来館が目だちました。今、6号館では世界70ヶ国から約1000羽の鳥の玩具や造形物を集めた「世界の鳥の造形展」を開催中ですが、それに合わせて今夏は鳥のおもちゃをテーマにした教室の数々を開きました。中南米や東欧の復活祭に登場する「鳴く鶏」を参考にした<紙コップの鶏>、日本の江戸時代に人気のあった「御来迎」を真似た<羽根を広げる孔雀のおもちゃ>、ヨーロッパ各地の木製玩具を参考に割り箸で作る<ついばむ鳥>、インドの露店で売られていた<はばたく鳥>など。今夏は申し込み者が多く、館長と学芸員が交替で担当したのですが、どの講座も回数を増やして、のべ220組の親子連れ来館者とおもちゃ作りを楽しみ、例年以上に活気ある教室となりました。 

  
巷でよく問題視されるように、子ども達は紐を結んだり、通したりといった作業の基本的所作がとても苦手ですが、一方で、絵画的な発想にかけては昔と変わらない、いやむしろ、様々な情報に囲まれているせいか、ユニークなものがいくらでも生まれてくる感じです。そして、普段はゲームにばかり夢中になっているはずの子どもが、「はばたく仕掛けがすごい!」と目を輝かせて言います。


「一個人の文化史は人類全体の文化史を繰り返す」のであれば、ゲームの中に詰め込まれた現代のプログラムに行きつくまでに、一人の人間として、古代、中世、近世、近代の物づくりの工夫を追体験する必要があります。だから、私たちの社会は、小学生の子ども達が、近代以前の玩具の中にある英知を体験できる機会をもっともっと用意していかなくてはならないと思います。

今夏、当館の資料は愛媛県歴史文化博物館へ、日本・モンゴル博物館へ、海津市歴史文化資料館へ、そしてちりめん細工の色々は大阪守口市の京阪百貨店ギャラリーへと出張しました。資料にひかれて私たちもあちこちへと出かけ、大忙しでしたが、それぞれの会場で様々な出会いがあり、両手にあまる思い出とともに夏休みが終わります。今、仕事を終えたおもちゃ達を帰館させる仕事と同時並行で、秋の展覧会の準備を進めているところです。

今秋は、江戸小物細工の小さな町並やドイツのエルツゲビルゲ地方ミニチュア、東欧や中南米のミニチュアマーケット、昭和初期に流行したミニチュア玩具づくしなどを一堂に集め、約1000点の資料によって、小さな小さな世界を描きます。縮小された世界への人々の愛着について探ってみたいと思っています。

(学芸員・尾崎織女)


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