博物館実習生を迎えて | 日本玩具博物館

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学芸室から 2006.09.09

博物館実習生を迎えて

当館では、博物館学を学び、学芸員資格を取得しようとする人たちに必要な「博物館実習」を実施し、年間3回にわけて6~8名の実習生を受け入れています。

9月の第2週は、1号館において、夏から秋への展示替えを行う週に当たり、以下のようなプログラムを組みました。二人の男子学生がこのような学芸業務の様々を実習し、私たちは若い人たちを得て、賑やかな一週間を過ごしました。

月日午前の実習午後の実習
9/4 ・博物館実習にあたって(オリエンテーション)
*館内巡視
・当館の学芸業務全般について
*資料の収集方法への考察、および登録方法の実習
9/5*展示ケース内整理実習
(4号館・世界の玩具コーナー)
・当館の企画展計画について
・資料の貸借業務について
*資料の梱包作業
9/6 *展示替え作業(展示物の整理)*展示替え作業(展示の要点理解)
9/7*展示ケース内整理実習  
(4号館・世界の玩具コーナー)
*キャプション作成
・企画展の広報について
・普及活動について
9/8*愛媛県立歴史文化博物館から資料返却立合い~資料の収蔵
*企画展目録作成
*日本玩具博物館クイズラリー作成実習
9/9 *展示ケース内整理実習(4号館・世界の玩具コーナー)
*ちりめん細工講座の見学
*クイズラリー実施
・来館者応対実習



2日目、閉館後の展示物撤収作業を一緒に行う頃から、二人は日本玩具博物館の環境に打ち解け、初めての梱包作業に緊張しながらも当館スタッフとの共同作業を楽しんでいる様子でした。

一週間というのは、自分自身の持ち味を仕事の中に表現するにはあまりに短い期間です。アンテナをピンと立てて、環境が語る言葉をしっかりとキャッチし、すべてを受け入れることだけで心身は飽和状態になってしまうかもしれません。博物館というところは様々な文化を背負ったモノと人が溢れているのですから。

それでも、その中から、博物館施設の社会的な役割やそこで働くことの意味について、また、博物館スタッフにとって大切にしなければならないことについて、実習を通して、実習生それぞれが自身の考えを打ち立てていけるよう、私たちは働きかけているつもりです。実習を終えて学芸員資格を得たとして、実際に博物館施設で働ける人は現実的に希少であるにしても、この社会に、博物館の理解者と味方が増えるということは素晴らしいことですから。

最終日、二人が作成したクイズラリーを実施しました。クイズラリーは、1号館から6号館の常設展や企画展の中で、特に観てほしい展示資料について質問を作り、来館者はそれらの問いに答えながら展示室を巡るものです。私たちスタッフが作るのとはまた違った趣の面白い内容に仕上がりました。果たして来館者は、観覧するポイントを得て楽しそうに6号館までを巡り、回答を手に揚々と受付へ帰ってこられます。実習生は、「自分達が作った問題を懸命に考え、解いておられる来館者の様子にうれしくなった。」と素直な喜びに満たされているようでした。

博物館学芸員実習風景

人とモノをつなぐ仕事の楽しさを実感することは、博物館実習において最も大事な体験の一つではないでしょうか。館の資料と来館者(利用者)、双方に対する愛情とあくなき探究心が博物館を支えるメンタリティだと思うし、双方を結び付ける喜びを基本に、博物館活動は展開されていくべきだと思うのです。

こうして若い学生さんたちと一緒に心をこめて準備した「ミニチュアおもちゃの世界展」――どうぞ楽しみにお越しくださいませ。

(学芸員・尾崎織女)



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