草花あそび伝承会のこと | 日本玩具博物館

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学芸室から 2005.08.30

草花あそび伝承会のこと

当館では、玩具作り教室とならんで、播州地方の伝承遊びを紹介する講座を繰り返し開催しています。特に最近では、麦わらを使った遊びを取り上げることが多く、手提げかごや踊り子人形、虫かご(ホタルかご)などを親子で手作りしています。

今夏は、地元・香寺町で実った小麦わらを使って、20組ほどの親子が虫かご作りに挑戦しました。麦わらは皮を剥いて、節になった部分を取り除き、また、乾いたままではポキポキと折れるので、ひと晩ほど水に浸して軟らかくしておきます。10cmほどに切った2本の麦わらを十字に組み合わせ、十字の先にあたる4ヶ所それぞれに麦わらを差し入れて、編み上げていきます。小学生はもちろん、親の世代(20代後半~40代前半)にとっても初めての体験です。参加者は、最初は自然物の扱いにくさに四苦八苦の様子でしたが、徐々に手が慣れてくると、真剣な表情で一本一本の麦わらを積み上げ、1時間経つ頃には、細かく渦を巻く綺麗なかごが編めました。大きさも渦巻く様子も、作り手の個性があふれています。「将来、麦わらを編むのがお仕事のオジサンになりたい。」とお父さんに話す小学生や、「規格化された素材ではないから扱いにくい分、自然の物には作り手の気持ちを穏やかにする力があるんですね。」と優しい顔で話されるお母さんをはじめ、皆、出来あがった作品に満足げでした。

さて、この麦わらの虫かごは、播州地方だけではなく、瀬戸内海を取り巻く広い範囲に伝承されてきたものです。6月の夜、十字に開いた底の部分から草を詰め、子ども達はホタル狩りに出かけました。たくさんのホタルを入れた小さなかごは、夜の闇の中で、さながら手作り提灯のようです。夏休みがやってくると、コガネムシやカナブンなど小さな虫を束の間、楽しむための虫かごにもなっていたようです。

瀬戸内地方に伝承される麦わら細工のかご

6年前の夏、来館者の中から約1400人を対象に四季の『草花遊びのアンケート調査』を行いました。その中で、夏の草花遊びとして「笹舟、麦わらのかご、麦わらの動物、麦わらのおどりこ、葉っぱのお面、虫のいたずら、野菜の動物、野菜の提灯、カヤツリグサ遊び、草の葉の風車、カンゾウの水車、メヒシバのかさ、オナモミのひっつき虫、オシロイバナ遊び、ホオズキ遊び、きびがら姉さま、ソテツの虫かご」をあげて、子ども時代に体験したもの全てに、〇印をつけてもらいました。

世代をこえて遊ばれ、人気があったものを順に示すと、①笹舟、②ホオズキ遊び、③オナモミのひっつき虫、④野菜の動物、⑤麦わらのかご……となります。「麦わらのかご」は、年齢が高くなるほどよく知られており、50代から70代にかけては全体の40~70%が懐かしいと回答されました。ところが、40代以下の年齢層になると、体験者は急に少なくなります。麦わら遊びの伝承が途絶えた一番の要因については、1960年代頃から麦作を行う農家が激減したことがあげられますが、どのような種類の草花遊びにおいても、高度経済成長時代が境目となって、その前後で遊び自体が質的に変化していることが、この時のアンケート調査によっても導き出されました。

幸い、香寺町では、10年ほど前から麦作がよみがえり、5月中旬になると黄金に輝く麦畑が見られます。「麦わらのかご」はもちろん、まだまだ自然環境が豊かな地域的な特色を生かし、一度途絶えた伝承の糸を次の世代につないでいけるような講座を今後も充実させていきたいと思っています。

(学芸員・尾崎織女)


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