アフリカのおもちゃと造形展に寄せて | 日本玩具博物館

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学芸室から 2005.09.11

アフリカのおもちゃと造形展に寄せて

秋の企画展「アフリカのおもちゃと造形展」が始まりました。当館では、これまでに「ヨーロッパおもちゃ紀行」「アジアの国のおもちゃ」「ラテンアメリカのおもちゃ」など、地域をテーマに当館の「世界の玩具コレクション」を総覧する企画展を催してきましたが、アフリカ州をテーマにするのは初めてのことです。

バナナの皮細工・バオバブの木と動物たち

今回の展示で当館が取り上げるのは、宗教儀礼に登場する部族芸術的な作品ばかりではなく、抱き人形や乗り物玩具、動物玩具、ヤジロベエやコマ、遊戯盤や楽器など、人々の暮らしの様子がより身近に感じられる品々です。

ただ、その中には、アフリカ各国の子ども達の玩具に加え、世界の民芸愛好者向け商品としての性格をもった作品が数多く含まれます。たとえば、バナナ皮細工の動物(ケニア)、グザと呼ばれる木の皮の繊維を編んだ人形(ジンバブエ)、サイザル麻細工の人形や動物(ケニア)、ビーズ細工の人形(南アフリカ・スワジランド)、ラフィア椰子細工の動物(マダガスカル)、針金や空き缶利用の乗り物や動物玩具(ブルキナファソ・マリ)などです。それらは、1980年代頃から、その地その地の伝統的な手工芸をベースに、ヨーロッパや日本のNGO、また民芸輸入業者などが、貧しい地域に定収入をもたらし、人々の生活の向上を図るため、女性たちを指導して村々の授産所で作らせ始めたものです。このように、その地の人々のものであった民芸を他者の視点でリメイクすることに対して、文化保存の立場から好ましくないととらえる向きもあるでしょうが、当館では、これを20世紀末期に起こったアフリカ造形の一つのトレンドと考え、意味ある資料群として紹介しています。他者の視点を得たとはいえ、その地にしかない手法で一点一点手作りされた玩具には風格と生命感があり、手にとって眺めてみると、商業主義に流されない作り手の誠実さが伝わってきます。

私たちは他国の風俗について、中国の北京はこんな感じ、インドネシアのバリ島はこんな感じ、ドイツのミュンヘンなら、フランスのアルザスなら・・・・・・と、アジア州やヨーロッパ州のことであれば、かなり具体的なイメージをもち、地図上の場所を思い浮かべることもできるのに、アフリカ州の国々のこととなると、頼りない知識しかもっていないようです。それで、今回はアフリカ大陸を北部、西部、東部、中南部にわけて地域の特徴を紹介する構成に致しました。地域ごとに玩具や人形をみていくと、この大陸の文化がいかにバラエティに富み、豊かであるかということに気付かされます。
1970年代終わり頃から、日本ばかりか、アフリカ在住の方のご協力も得て、当館が精力的に収集してきたアフリカ玩具の数々をこの機会にぜひ、ご覧いただき、遠い国々を身近に感じていただけたら、と思っています。

(学芸員・尾崎織女)

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