日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内 exhibition

企画展

日本玩具博物館*秋の企画展 「ふるさとの玩具―古今東西」

会期
2011年9月17日(土) 2011年11月15日(火)
会場
1号館

わが国では江戸時代中期から明治時代にかけて、子どもたちの健やかな成長を願い、身近にある紙や木、竹や土などを使って、各地で楽しい玩具や人形の数々が作られました。ふるさとの風土や暮らしぶりや美意識などを反映して、その地域ならではの味わいのある玩具や人形が誕生したのです。

現在、郷土玩具と呼ばれるこれらは、明治時代になって近代化の波が押し寄せると、ブリキやセルロイド製などの工場で大量生産される目新しい玩具の台頭で、時代遅れの玩具として消える運命にありました。ところが、わが国では数多くのものが今も作られています。それは消える寸前の明治時代中期に、郷土玩具に日本美や郷愁を感じて集めて楽しむ大人たちが現れたからです。それらの人々に支えられ、世界に誇れる民族玩具の数々が今に残りました。しかしその後、世界大戦の戦禍と戦後の混乱の中で多くのコレクションが失われ、数多くの郷土玩具が廃絶しました。

戦後、世の中が落ち着くと再び郷土玩具の収集ブームが起こり、昭和30~40年代には続々と郷土玩具やこけしの専門書が出版され、ふるさとブームの波にも乗って、郷土玩具も脚光を浴びますが、昭和時代が終わる頃にはブームも去って、後継者もない中で多くが消えようとしています。

過去にアメリカ、ブラジル、スイス、ベルギーなどで当館所蔵の日本の郷土玩具展を開催しましたが、海外では日本人の美意識や造型感覚を表現した“アート”として高い評価を受けました。郷土玩具は、単なる子どもの遊び道具ではなく、人々の美意識や造形感覚が表現され、過ぎ去った昔の風俗や暮らしぶりが遺された民族の文化遺産であるといえるのです。

当館では館長井上重義が48年前から郷土玩具を収集し、また著名な郷土玩具収集家のコレクションの寄贈を受けて、明治時代から現代に至る3万点もの膨大な郷土玩具を収蔵しています。昨年一年間、館長は時事通信社から依頼を受けて、コラム「ふるさとの玩具」を執筆。所蔵の郷土玩具を写真と180字ほどの文章で紹介し、全国の地方新聞に毎日連載されました。昭和初期に作られ、その土地にも残るものはないと思われる「仙台の姉様」や「長崎の太鼓台」などの廃絶したものも紹介しました。それらの貴重な資料を含め、北海道から沖縄までの約350点を展示いたします。日本各地の風土や暮らしの中から生まれ、過ぎ去った昔の風俗や暮らしぶりが遺された「ふるさとの玩具」の数々をお楽しみ下さい。

また連載した「ふるさとの玩具」を修正加筆して1冊(A5版総カラー160頁)にまとめ、本展の図録的な役割も果たす『ふるさとの玩具図鑑』が9月初旬に平凡社から出版されます。

展示総数  約350点

【北海道・東北地方】

木で作られた網走のニポポや東北各地のこけし、優雅で繊細な土人形や張り子の人形、祭りに因んだ金魚ねぶたと鹿おどりに梵天の玩具、雪の上で回す津軽のずぐりこま、鳴子や蔵王で作られた競馬こまや林檎こま、それに日本三駒として有名な八幡馬と木ノ下駒と三春駒など、東北らしさがあふれた玩具や人形たちを紹介します。廃絶して入手不可能な八戸のくけまりや久ノ浜張り子などが見どころです。

【関東地方】

すすきみみずくや暫狐、千木筥、犬張り子に今戸人形など、大都市・東京には今も江戸時代からの伝統を継ぐ玩具の数々が今も神社から授与されたり、伝統を継ぐ人々の手で作られています。日光の茶道具や箱根の寄せ木細工や組木、江戸こまなどの古い歴史を持った木製品の数々。明治時代からの歴史を今に伝える高崎だるまや招き猫、芝原人形に鴻巣人形などの貴重な人形たちも紹介します。

【中部地方】

北陸路の風土から生まれた能登のキリコの玩具や新潟の鯛車、加賀のからくり仕掛けの玩具。独特の風格をもつ富山や金沢の獅子頭。金沢の八幡起き上がりや静岡の髭だるま、甲府の親子だるまなど、ユニークなだるまの数々も、この地方ならではの存在です。楽しいのは、凧どころ静岡や愛知のユニークな形の凧。信州のあけび細工の鳩車、桐原の藁馬も山国の風情を伝えています。

【近畿地方】

古都京都に伝わる伏見人形や鄙びた風情がある大和出雲人形。商都大阪の初辰の猫や種貸しさんに神農さんの虎、奈良法華寺の守り犬などの授与品、温泉土産で有名な有馬の人形筆や城崎の麦わら細工など、どれもが古い歴史に彩られた玩具です。伊勢参りの土産として親しまれた鳴りこまや練物玩具。作る人がなくなった京都の清水の豆人形や伊勢の竹蛇にも懐かしさが漂います。

【中国・四国地方】

山陰路の鳥取の流し雛やきりん獅子。出雲の鯛車と張子の虎、山陽路の季節感漂う倉敷のすいんきょや尾道の田面船などの玩具。全国の土人形の中でも評価が高い三次人形や長浜人形。四国の高松や高知の張り子玩具の数々。南国らしい土佐の鯨車や鯨船。四国の祭りを代表する太鼓台や牛鬼の玩具。今は作る人がなくなった撫養の首人形や高松の運動人形、今治のこまや宇和島のこまも並びます。

【九州・沖縄地方】

廃絶した産地が目立つとはいえ、今も楽しい玩具や人形が数多く作られているのがこの地方です。昔の博多人形の伝統を守って作られる古博多人形やその流れを汲む津屋崎と弓野人形。素朴な独特の描彩で知られる赤坂人形と尾崎人形。熊本の木の葉猿も全国でも類がない独特の雰囲気をもった人形です。江戸時代の開港地長崎の歴史を伝える古賀人形もユニークな作品が目立ちます。一方、沖縄の玩具は大陸の影響を受けて、独特の雰囲気を醸しだしています。