展示・イベント案内
exhibition冬の企画展 「犬のおもちゃ」
- 会期
- 2017年11月18日(土) 2018年2月20日(火)
- 会場
- 1号館
●干支(エト)の動物テーマにしたお正月の特別展も恒例となりました。「十二支」は、日本人の暮らしに根強く密着した民間信仰です。例えば、生まれ年にあたる動物の性質がその人の性格や運勢などに関係するという信仰、自分の生まれ年に因んだ動物を守りにする習俗などがあります。日本の郷土玩具はこれらを母体にして生まれた庶民的な文化財です。
●来年の干支の動物は「戌(=犬)」。干支の動物の中でも犬は、馬、猿、牛などと並んで、土や紙を素材として多くの楽しい玩具に作られてきました。これは、日本人と犬との深い交流を表わしています。犬張り子をはじめ、日本の郷土玩具における犬は、産婦や赤ん坊の守りとして、また小さな子どもの遊び相手にふさわしい玩具として、近世以来、長く親しまれてきました。
●犬は遠い昔に家畜化された動物です。古代から人間とともにあって、昼も夜も外敵を追い払い、目に見えない悪霊さえも退ける力をもつと信じられてきました。その犬の霊力を子どもに移し、犬の玩具のもつ力で子どもの健康や幸福を守ろうという願いから、人々は犬の玩具を子どもたちに与え続けてきたのでしょう。
●本展では、日本各地で古くから作られている犬の郷土玩具を紹介します。土や木、紙や植物などの自然素材で手作りされる犬の表情は、子どもの表情をうつしたように素朴で愛らしく、故郷のかおりに満ちています。犬を連れた童子の人形も多く、昔からいかに子どもと犬が仲良しであったかを知らせてくれます。今回は、そんな犬の郷土玩具にブリキやセルロイドで作られた日本近代の犬の玩具と、世界各地で作られる民芸的な犬の玩具を合わせてご紹介します。
■展示総数約350点
A.郷土玩具の犬~日本の犬の造形~
●江戸時代の終わり、庶民階級が経済力を持ち、農村部にも商品経済が広がっていく頃になると、土や木や紙など身近にある材料を使って、専門的に、また農閑期を利用して季節的に素朴な玩具が作られるようになります。これらは“郷土”と言われる狭い範囲で流通したものが多く、今日、郷土玩具の名で知られています。人々の生活の中から生まれ、愛されてきた郷土玩具は、子どもたちを喜ばせるおもちゃというに留まらず、郷土の信仰や伝説、美意識や幸福観を表現した小さな造形といえます。この郷土玩具の題材として取り上げられた犬の造形をグループごとにご紹介します。郷土玩具に見られる犬は、耳の立った大和犬と耳が垂れた狆の二種類が見られます。京都の伏見焼をはじめとして土人形には狆が多く、張り子などには大和犬が題材となったものが目立ちます。
郷土の犬の造形~狆~
●江戸時代の愛玩犬は“狆”に限られていたため、郷土玩具の犬は京都府の伏見焼をはじめ、ほとんどが狆です。狆の型が各地に伝えられると、土質や形、大きさ、彩色などの違いからそ れぞれに異なる味わいを生みました。座り姿、立ち姿、真向かい立ち姿、睦み姿などが代表的な型です。
郷土の犬の造形~犬と童子/犬と人~
●このグループは、犬のり童子や犬抱き娘など、犬と人を組み合わせた造形です。「犬は子どもが好き、子どもは犬が好き」の言葉どおり、どの産地のものも情愛にあふれる作品ばかりです。
郷土の犬の造形~犬張子~
●犬張子は、江戸―東京地方で江戸時代から親しまれ、安産の守りとして妊婦に贈られたり、新生児の祝い物にされたりしてきました。会津若松や浜松、名古屋、伊勢などにも同型の作品が見られます。
郷土の犬の造形~守り犬~
●奈良・法華寺で授与される小さな土の守り犬、子どもの夜泣きどめや盗難除けのまじないとして贈られる岡山県吉備津の犬、疱瘡除けのまじないとなる埼玉県鴻巣の赤い狆、子どもの夜泣きや鼻づまりに効くとされる京都伏見焼のまじない犬など、“御守り”として愛されてきた小さな犬の造形物をご紹介します。
B.日本近代の犬のおもちゃ
●明治時代以降、玩具が工場で量産される時代になっても、犬は玩具の題材として人気を博します。でんぐり返る犬、鳴き声を立てる犬、尻尾をふる犬、くるくる回る犬など、愛らしい犬の動きは強調された仕掛け玩具は、日本だけでなく、輸出用として様々なバリエーションが制作されました。このコーナーでは1950~70年代の犬の近代玩具をご紹介します。
C.世界の犬のおもちゃ
●ここでは、よちよち歩く犬、ひょっこりひょっこり走る犬、小屋からとび出してくる犬など、動きの愛らしい玩具を世界各地からご紹介します。イタリア、スウェーデン、ギリシャ、インド…と、各地の近代玩具を集めてみると、犬の玩具には赤いものが目立ちます。子どもがもっとも喜ぶ色が赤であるにしても、赤い犬が好まれるのはなぜでしょうか。
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