日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内

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企画展

春夏の企画展 「世界の乗り物玩具 ~陸海空の楽しい乗り物~ 」

会期
2018年3月3日(土) 2018年9月4日(火)
会場
1号館

日本玩具博物館が世界各地の玩具収集を始めて40年が経過しますが、乗り物玩具に関しては、どの国の子どもたちにも人気があることに驚かされます。製品化された玩具を待つまでもなく、紙風船や笹舟を作って、それらが空や川をかけ抜けるさまを見守った思い出は、誰の心にも息づいているでしょう。世界の乗り物玩具の豊富さは、子どもたちがいかに動く物体を愛し、遠くの世界へ人や物を運ぶ乗り物に夢と憧れを抱いてきたかを知らせてくれます。

乗り物玩具のいろいろ

ひと口に乗り物といっても、馬車や牛車から汽車、自動車、船、飛行機…と様々。言うまでもなく、それぞれに人間の英知が詰め込まれています。中国の古文献には、「風に転がる蓬(よもぎ)の葉を見て、人類は車を作ることを思いついた」と記されています。“車の回転を利用して物を移動させる”という発想に、人力、畜力、蒸気やエンジンなどの機動力をプラスして、人間は乗りもの文化を発展させてきたのでしょう。より速く、より安全に、より快適に移動するために。

このコーナーでは、世界約50ヶ国から陸海空の代表的な乗り物玩具が一堂に集まり、展示ケースの中をにぎやかに行進します。乗り物の発達の歴史にも目を向けながら、船、人力車や自転車、馬車や牛車、機関車、ヘリコプターや飛行機、乗用車、トラックやトレーラー、消防自動車などをグループごとに展示し、またショベルカーやローラーカー、リフト車など工事現場で活躍する車の玩具も世界各地から集合します。

船の玩具

ボート、カヌー、ヨット、帆船…。漁船、運搬船、観光船、貿易船…。様々な国の、様々な種類の船が神戸へと入港してくる風景をイメージし、世界各地の船の玩具やひな型を集めました。

中国の帆船“ジャンク”、西サモアやフィジーなどに見られる“アウトリガー・カヌー(転覆を防ぐために本船から腕木を出して副船をつないだカヌー)”、大西洋を航行するブラジルの“ジャンガーダ(くり船を数艘つなぎ合わせた船)”など、船の玩具の美しい造形をご覧下さい。 それらは、刻まれる模様や素材なども実物に忠実であるため、私たちは、 船の玩具を通して、世界各地の船の姿を知ることができます。

昭和20~40年代、縁日の露店などで人気を博したブリキの“ポンポン船(ロウソクの火で進む船)”は、海外の国々にも影響を与え、インドネシア、インド、メキシコなどでも作られています。

   

古い時代の乗り物玩具~馬車・牛車・人力車・自転車~

乗り物とは人や物をのせて移動するものをさします。産業革命以前(=蒸気機関が開発される18世紀半ばより前の時代)の乗り物には、馬車や牛車などの畜力によるもの、駕籠(かご)や人力車、自転車などの人力によるもの、また熱気球や帆船など、自然の力を利用したものなどが存在しました。それらは、今も世界各地で使用されており、また玩具の中にも古い時代の姿を探すことが出来ます。
ここでは、馬車と牛車、人力車と自転車をとりあげ、世界各地で作られるユニークな玩具を紹介します。馬や牛の造形表現にもご注目下さい。

馬車と牛車

馬車は、馬やロバなどの後ろに車をつけて人や物を運搬するもので、牛車も同様に運搬のための交通手段です。畜力を利用した車がいつ発明されたかは明らかではありませんが、メソポタミアをはじめ、古代文明の遺跡からは、馬車の存在を知らせる遺物が発見されています。ここでは、バギーや二頭立てのキャリッジ、幌馬車“カブリオレ”、オックスカートなどの素朴な馬車や牛車の玩具を展示します。

馬車・牛車展示コーナー

人力車

17世紀から18世紀にかけてのフランスでは、大型荷物の運搬用手押し車“ビネグレット”が使われていました。現在、世界で使用されている人力車の起源は、明治初期の日本に求められます。人力車は、19世紀末にはリクシャー(Rickshaw)の名前でアジアへと普及し、各地で自転車タクシーへと発展をとげました。

人力車展示コーナー

     

レールを走る車~機関車・列車~

玩具の世界は、時代の最先端に敏感です。蒸気機関車がレールを走れば、翌年には汽車の玩具が人気を博します。例えば、昭和39(1964)年、“新幹線”のデビューに先立って、“夢の超特急”という名で、様々な玩具会社が新  幹線らしき玩具を発売し、子どもたちの人気をさらったことが想い起こされます。そして、時代の最先端は、いったん玩具の世界に取り込まれると、そのほとんどが淘汰されることなく、生命を保ち続けていくようです。

ここでは、世界各地の機関車と列車の玩具を集めて紹介します。郷土性あふれる民芸玩具に、デザイン性豊かな玩具会社の木製玩具を加え、同じ題材における幅広い造形表現をお楽しみ下さい。

機関車

機関車は、車両の中に動力装置をもつ駆動車。他の駆動しない車両を引っ張ったり、押したりしてレール上を運転する車両です。動力源によって、蒸気機関車、ディーゼル機関車、電気機関車などに分類されます。初めて蒸気機関車が走ったのは、1804年のイギリス。日本においては、明治政府が発足して間もない明治5(1872)年のことでした。
 各地の機関車の玩具のデザインを比較してご覧下さい。

機関車展示コーナー

列車

列車は、レールの上を走る連結された車両のこと。人を運ぶ旅客列車と物を運ぶ貨物列 車があります。ここでは、蒸気機関車やディーゼル機関車、電気機関車にひかれて走る世界各地の列車の玩具を地域ごとに紹介します。子どもたちの列車好きに応えるように、車両連結部に工夫をこらしたもの、旅客の姿や貨物の造形が楽しい作品も目立ちます。

列車展示コーナー

   

空を飛ぶ大きな翼~ヘリコプター・飛行機~

まり(ボール)のように空高く上がり、鳥のように飛ぶことへの憧れは、熱気球や人力による飛行機を生み出し、やがて1903年、アメリカ合衆国のライト兄弟が世界初の動力飛行に成功します。

子どもたちの空を飛ぶ大きな物体への関心と憧れの強さを反映して、世界各地で飛行機やヘリコプターの玩具が作られてきました。ここでは、本物に忠実な模型的な玩具に、翼やパイロットの姿をデフォルメしたデザイン性豊かな玩具を加え、世界各地の飛行機とヘリコプターの玩具を紹介します。着陸した姿で展示するほか、空中を飛ぶ姿もまたご覧いただきます。

飛行機

1903年、アメリカのライト兄弟による有人動力飛行に始まった飛行機は、二つの世界大戦の中で技術的な発達をみせました。飛行機には、旅客機、軍用機、実験機などの種類があり、様々な形がありますが、ここでは、旅客機100年の歴史を体現する愛らしい玩具の色々を世界各地からご紹介します。

木彫彩色の飛行機(ブリキナファソ/1990年代)

ヘリコプター

ヘリコプター創造への模索は、紀元前の中国に始まったともいわれています。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた15世紀のスケッチがヘリコプターの誕生を予感させましたが、実際にパイロットを乗せたヘリコプターが初めて飛んだのは、1907年のフランスの空でした。
ここでは、ヘリコプターの玩具の単純化された造形の面白さをお楽しみ下さい。

ヘリコプター(スイス・カナダ/1980年代)

    

道路を走る車~クラシックカー・ジープ・バス~

発動機を装備し、その動力によって車輪を回転させるものを「自動車」と定義すると、世界各地の道路には、実に様々な姿形の自動車が走り回っています。玩具の世界では、20世紀初頭のクラシックカーもなつかしいボンネットバスも現役です。
 展示ケースの中、4車線の道路を、世界の子どもたちが喜ぶ自動車の玩具が行進しています。イギリスの二階建てバスが走れば、フィンランドのオープンカーも走り、ブラジルのクラシック・カーとともにナイジェリアのビートル、ネパールのオート三輪タクシーも走っています。国際色豊かな道路を楽しくご覧下さい。

クラシックカー

自動車がフランスで発明された頃、動力は蒸気機関。蒸気自動車は、19世紀のイギリスで普及をみていました。1870年、オーストリアのマルクスがガソリン自動車を発明し、ドイツやフランスを中心に、快適な乗用車の開発が進められました。ここでは、20世紀初頭の自動車を模して作られた玩具のクラシックカーを集めてご紹介します。

木彫のビートル(ナイジェリア/1990年代)

ジープ

ジープ(Jeep)は、本来、クライスラー社が製造する四輪駆動車のブランド名なのですが、悪路や急勾配においても走行性に優れ、高い耐久性をもつ四輪駆動車が広く「ジープ」と呼ばれています。昭和20年代(1945~52年頃) 、焼け野原になった戦後の日本を走り回っていたのは進駐軍のジープ。日本における戦後の乗り物玩具の歴史は、ジープを模して空き缶で作られた一台のブリキのジープから始まりました。

バス

バスの起源は、フランスのB・パスカルが考案した乗り合い馬車だとされています。バスの語源は、ラテン語の「オムニバス」(すべての人々のために)にあるそうです。日常の交通手段として、街中を走り回り、多くの人たちと一緒に利用するバスは、子どもたちにとって親しみのある乗り物のひとつでしょう。小さな人形を乗り降りさせながら、走らせて遊ぶ玩具が世界各国で作られています。

ケラー社のバス(ドイツ/1990年代)

  

働く車~貨物自動車・工事現場の車・消防自動車~

子どもたち、特に男児の興味は、小さい頃から消防自動車や貨物トラック、自動車運搬車、ダンプカーやショベルカーなど、大きくて特別な機能をもった車に向けられます。こうした働く車への憧れの強さに応えるように、貨物自動車、工事現場の車、消防自動車などが世界各地で玩具化されています。車のもつ機能をデフォルメしたデザインが見られ、同じ消防自動車、同じショベルカーにあっても、玩具の造形にはお国柄がよく表現されています。また荷台にセットされた材木や積み木で建物を造れる玩具や、磁石つきの積み木をリフトで吊りあげて遊べる玩具など、思わず手にとってみたくなる楽しい仕掛けも随所に見られます。

消防自動車

消防自動車は、火災発生時に消火活動を行う目的で緊急出動する自動車のこと。19世紀半ば頃、イギリスやアメリカで蒸気消防ポンプ車が発明され、それが元となって欧米社会で発展をみました。日本へ消防自動車が導入されたのは大正時代のこと。消防自動車は、昔も今も子どもたちに高い人気を誇る働く車です。

消防自動車(ドイツ・ニュージーランド/1990年代)

貨物自動車

ここでは、トラックやダンプカー、タンクローリー、ミキサー車など、物を運ぶ車の玩具を集めてご紹介します。実物に忠実に作られた玩具があれば、形を抽象化したデザイン性豊かな玩具もみられます。

工事現場の車

クレーン車、ブルドーザー、ショベルカー、コンクリートミキサー、ロードローラー、フォークリフトなど、工事現場の作業車を模して作られた乗り物玩具を集めました。物を吊り上げたり、地ならししたり、地面を掘ったり…、車のもつ特殊な機能を単純化した玩具は、子どもたちの、何でも真似てみたい心を満たし、世界中で人気があります。


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