日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

秋冬の企画展 「世界の伝承玩具 ~こま・凧・けん玉・ヤジロベエ・ボール・風車~」

会期
2018年9月15日(土) 2019年2月19日(火)
会場
1号館
世界各地の木の実コマ

世界を見渡してみると、時をこえ、国境を越えて普遍的に作られ、遊ばれてきた玩具があることに驚かされます。例えばこまは、エジプトやギリシャなどの紀元前数千年の遺跡からも出土し、いかに古くから人間とともにあったかを示しています。 本展では、世界の伝承玩具の中から「こま」「けん玉」「ヤジロベエ」「ボール」「風車」「凧」を取り上げます。動物や乗り物の玩具、人形やままごと道具などが生物や道具を模倣して作られているのに対し、これらの伝承玩具は、何をまねたのかわからない、あえて言えば、自然現象から霊感を得て創造された造形とも考えられます。これらの玩具は、子どもの想像力にうったえて、豊かな遊びの時間をもたらしてくれます。展示室を巡りながら世界に広がる伝承玩具の造形的な面白さに触れていただければ幸いです。

世界のこまと日本のこま

コマは、いつ、どこで、誰によって発明されたのでしょうか? その 答えのすべては今のところ明らかにされていません。例えばコマは、木の実が枝から落ちてクルクルと回転する、そんな動に霊感を得た古代の人間が創造したものかもしれません。世界の国の伝承玩具を見渡してみると、中南米には瓢箪や植物の種を使ったひねりゴマがあり、太平洋の島々には大きなドングリの鳴りゴマがあります。日本の子どもたちも秋が来ると、クヌギやアベマキのドングリに楊枝を刺して、小さなコマを作ります。そんな素朴な遊びの中に、古代のコマの姿が保存されているのではないでしょうか? このコーナーでは世界各地のコマを集め、バリエーション豊かなコマの造形を地域ごとに展示します。インドネシアや中国に古くから伝承される竹鳴りごまと、古代日本の「こまつくり(古末都玖利)」や郷土の竹鳴りごま、中南米の投げごまと九州地のけんかごま、日本の郷土のこまと対照させながらご覧いただき、造形における世界とのつながりを発見していただければ幸いです。

世界と日本の郷土ゴマ(左端から時計回りに日本・兵庫県/中国ウイグル共和国/日本・長崎県/日本・兵庫県/スペイン)

世界のけん玉と日本のけん玉

けん玉の発祥については中国に起源を求める説があり、またヨーロッパの国々で発展したという説もあります。16世紀のヨーロッパでは、王侯・貴族階級を中心に、けん玉遊びが流行していたことを示す資料が残されています。 今も、けん玉は、ヨーロッパをはじめ、中南米やアジアの国々でも広く愛されています。世界のけん玉を集めてみると、その形は様々。大きく分けると、皿(盃)に球を受け止めるカップ&ボール型とけん先に球を刺し入れるピン&ボール型に分類できます。 日本のけん玉は、鎖国時代に南ヨーロッパの国々から伝わったと想像されます。浮世絵などに描かれる日本のけん玉は、カップ&ボール型。江戸時代後期は、玉を盃に受け損ねた者がけん玉に酒を注いで飲み干すという、大人の宴席の遊戯具として使われていたようです。明治時代になると、ドイツなどからピン&ボール型のけん玉も流入し、けん玉は、子どもの運動能力や集中力を養う教育の道具と位置づけられました。現在、「KENDAMA」として知られる軸の左右に大皿と小皿、下部に中皿、上部にけん先がついたけん玉は、大正7年に広島県の江草濱次が考案した日本独自の形です。技を競い合う世界大会が行われるほど世界に広く愛好者をもつ遊戯具ですが、古くから各国で親しまれてきたけん玉の造形をお楽しみください。

世界と日本のけん玉(左端から時計回りに日本・江戸時代型/日本・大正時代型/フランス/イタリア/イギリス)

世界のヤジロベエ

オモリを揺らしてバランスを楽しむヤジロベエの玩具は、アジアに起源があるとされていますが、世界各地で作られ、今も子どもたちに人気があります。中心の人形が一本足に作られ、コマのように回転させて遊ぶものや、二本足のものも見られます。 日本では江戸時代にはヤジロベエではなく、「与次郎兵衛(よじろべえ)」の名で親しまれていたようです。与次郎という物売りが、笠の上にこの人形をのせて見せ物にしたことからこの名がつき、それがいつの頃からか「弥次郎兵衛(ヤジロベエ)」と呼ばれるようになったとされています。

世界と日本のヤジロベエ(左端から時計回りにインド/ブラジル/イタリア/日本)

世界の風車

風が吹くと羽根がくるくる回る風車も、遠い昔から子供たちに遊ばれてきました。風車は時代によって、材料や形に移り変わりがあります。大昔は木の葉などで作られていましたが、近世になると、アジアなどでは、細い竹片を編んで紙を貼ったりしたものなどが作られました。ヨーロッパではT字型の先に紙片を付けて回す形が多く見られます。近代に入ると、セルロイドやプラスチック製の羽根をもつ色彩も鮮やかな風車が次々に登場します。

世界と日本の風車(左端から日本・江戸時代型/日本/イタリア/中国)

世界のボール

投げたり、ついたりして遊ぶボールは、球体であるとは限りません。太平洋に浮かぶ国、キリバスやインドシア半島のラオスに伝承されるヤシの葉編みのボールはそのことを教えてくれます。東南アジア各地に伝えられる籐で編まれたボールのスポーツ「セパタクロー」、鳥の羽根や紙の房をつけた中国や韓国では古くから親しまれている「足けり」。単純な形の玩具には、遊びを工夫する楽しみがあり、遊び手の熱中の度合いが高くなります。それが、単純な形のボールが古代から世界各地で愛されてきた理由でしょうか。

世界と日本のボール(左端から時計回りにキリバス/マレーシア/イギリス/日本の郷土手まり2点)

世界の凧

大空を自由自在に飛ぶ鳥の姿を見て、人間は大いなる空に憧れを抱いたのでしょうか。風で木の葉が空高く舞い上がる様子に霊感を得て、我々の遠い祖先は「凧」を創造したのでしょうか。インドネシアやパプアニューギニアなど、南洋の国々には遠い昔から木の葉の凧が伝承されており、それらは凧の始まりの姿を物語っているようです。 世界の国々には、鳥や虫、動物や人の姿をデザインしたユニークな形の凧が伝承され、子どもだけでなく、大人の遊び道具として、時には漁や運搬のためなどにも凧は活躍しています。

アジアの凧(上からスリランカ/タイ2点)


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