「季節を彩るちりめん細工」 | 日本玩具博物館

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企画展

春の企画展 「季節を彩るちりめん細工」

会期
2012年2月25日(土) 2012年6月5日(火)
会場
1号館

「ちりめん細工」は江戸時代からの歴史をもつ伝統手芸です。縮緬は細やかな「しぼ」をもつ優しい絹織物で、300年ほど前の江戸時代から現在に至るまで、日本の着物の材料として愛好されてきました。江戸時代の後半、御殿女中や武家の女性たち、また都市部の裕福な商家の女性たちによっても、着物を裁ったあとの縮緬絹織物や他の残り布を利用して、美しい袋物や小箱が作られるようになりました。人形や動物、花などをかたどったそれらの小袋や小箱を、今日「ちりめん細工」と呼びならわしています。ちりめん細工は小さな布裂をも大切にする心、美的感覚、手先の器用さを身につける手芸で、日本女性の教養の一つでもありました。モチーフとして選ばれる花や動物、また器物の形には、日本人が伝えてきた吉祥や魔よけの文様が見出されます。

魔除けと招福の願いがこめられたお細工もの(明治・大正時代)

明治時代に入ると、ちりめん細工は女学生の教材として取り上げられ、女学生達は伝承に基づきながら、意匠をこらしたお細工物作りを競い合いました。『裁縫おさいくもの(明治42年)』『続裁縫おさいくもの(明治45年)』『裁縫おもちゃ集(大正6年)』〈いずれも大倉書店)などは、女学校の教科書として書かれたちりめん細工の手引書として有名です。花や動物の袋物は香入れや琴爪入れとして、玩具や人形の袋物は子どもの御守りとして使用されたようです。

女学生たちのお細工物と教科書

こうして江戸時代から明治、大正、昭和と作り伝えられてきたちりめん細工ですが、戦争による世の中の混乱や生活様式の変化の中で、いつしか忘れられた存在になりました。日本玩具博物館は、ちりめん細工が伝える世界の素晴らしさに気付き、30余年前より古作品や文献資料の収集を行い、また1986年からは博物館活動の一環として展示や講習会を開催し、復興と普及に努めてきました。

近年、福岡県柳川の「さげもん」や静岡県伊豆の稲取「つるし飾り」をはじめ、桃の節句にちりめん細工をさげ飾る風習がリ・メイクされ、各地で盛んに作られるようになりました。また、「和」の細工物が女性たちの人気を呼び、「ちりめん細工」は再び、私たちの暮らしの中で息づき始めした。この流れをただのブームに終わらせないためには、伝承されてきた細工物の歴史をたどり、細工物の一つ一つに込められた意味や、造形的な工夫・知恵をおさえておくこと、さらにそれらを現代の暮らしに取り入れていく工夫が大切だと考えます。

そこで、本展では、当館が新たに収集した江戸から明治時代の古作品を紹介するとともに、四季折々、「和」の暮らしにちりめん細工をいかしていく提案作品をご紹介いたします。

昨年12月には日本ヴォーグ社より『ちりめん細工・つるし飾りの基礎』(日本玩具博物館館長・井上重義監修)を発刊し、この中にも季節感を暮らしに生かすちりめん細工の楽しみを紹介しています。本展では、この新本に掲載された作品もずらりと展示いたします。
古作と新作を合わせて、私たち伝えてきた愛らしい物づくりの世界をお楽しみいただきたいと思います。

展示品総数 350点

〇江戸から明治・大正時代のお細工物

 当館が所蔵する江戸から明治時代にかけて作られたお細工物コレクション約1000点の中から、花や動物、袋物や巾着、人形、玩具や小箱など、新しく収蔵した作品を紹介します。これらは、香袋として、御守りとして、小さな宝物入れとして、あるいは琴爪入れとして使用されていました。中部地方には、ちりめんの袋物を嫁入り箪笥の上にのせて持参する風習も残されています。花嫁の幸福を予祝する縁起物であると同時に、裁縫の腕前を婚家に披露する意味もあったのでしょう。 

古作品のいろいろ

○新作品のいろいろ

 日本玩具博物館ちりめん細工の会の会員によって復元、応用制作されたちりめん細工作品の中から「花と実」「鳥と動物」「袋物と巾着」「人形とおもちゃ」のグループにわけ、代表的な作品を紹介します。

春のちりめん細工

○輪飾り/つるし飾り/傘飾り

 竹の輪から数連の糸をたらしてちりめん細工をさげ飾る「輪飾り」や「つるし飾り」は、福岡県柳川や伊豆の稲取などで、桃の節句を祝う地方の飾りものとして伝承されてきたものです。これらの伝承を踏まえ、当館では、節句や季節の行事、四季折々の風物を織り交ぜて、季節を彩る飾り方を考案し、広くご提案しています。このゾーンでは、昨年末に発刊した『ちりめん細工・つるし飾りの基礎』に掲載された作品を中心に、これまで、当館館長の監修によって出版した書籍にご紹介する「輪飾り」「つるし飾り」「傘飾り」などを一堂に集めて展示いたします。

1号館囲炉裏端の傘飾り


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