「春を祝うイースターエッグ~イースターバニーたちとともに」 | 日本玩具博物館

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企画展

春の企画展 「春を祝うイースターエッグ~イースターバニーたちとともに」

会期
2013年2月23日(土) 2013年5月21日(火)
会場
1号館
東欧のイースターエッグ(ろうけつ染め・エンボス・切り紙細工などいろいろな技法で…)

復活祭(=イースター)は、イエス・キリストが十字架上で亡くなって3日目によみがえったことを祝う行事です。春分の日を過ぎ、最初に満月を迎えた後にやってくる日曜日が復活祭当日にあたります。本年は、西方教会では3月31日(東方教会では5月5日)が“イースターサンデー”です。キリスト教世界では、クリスマスより重要な意味をもつ祝祭であり、すべての生命が目覚め、再生するスタートラインとも考えられています。

復活祭の雰囲気を盛り上げるのが“イースターエッグ”と呼ばれる卵です。卵殻を彩色して裸木に飾り付けたり、“エッグハント”といって、早朝、庭や野原のあちらこちらに隠した卵を子どもたちが探す遊びも伝承されています。古来、卵は、生産力の源として神聖視され、目覚めや再生を象徴するものであったことから、春の祝祭と結びついたと考えられます。

装飾物となるイースターエッグは、卵の上部に小さな穴を開けて中身が抜かれ、殻には様々な幾何学模様や動物の絵柄が描かれますが、それらは太陽や星、空や大地、豊かさや平和、愛や慈悲、信仰心や守護、結婚や子宝、永遠や不死など、“自然”と“人生の価値”を象徴しています。

1930年代ころのイースターエッグ(チェコ/ろうけつ染め)

復活祭のもうひとつのシンボルが“イースターバニー”と呼ばれるウサギたちです。ヨーロッパには古くから、「ウサギがイースター・エッグを運んでくる」という伝承があります。古代ゲルマン人にとって、ウサギは新しい種をもたらす豊穣のシンボルと見なされていましたし、また、ヨーロッパ各地の伝説をたどると、ウサギは他者のために自分の生命を犠牲にする動物と信じられていたことも理解されます。

本展では、この数年の間に新しく収蔵した東欧各地の“イースターエッグ”のすばらしい造形美をご紹介するとともに、世界各地で復活祭にちなんで作られているウサギの玩具を展示いたします。また、太陽の化身として、春のシンボルとも考えられる鶏の玩具や鳥笛、復活祭にまつわる発音玩具なども集め、春を寿ぐ異国の造形をお楽しみいただきたいと思います。

展示総数  350点


イースターエッグ

イースターエッグ展示コーナー ドイツ/ポーランド

古来、卵は、生産力の源として神聖視され、目覚めや再生を象徴するものであったことから、春の祝祭と結びついたと考えられます。装飾物となるイースターエッグは、卵の上部に小さな穴を開けて中身が抜かれ、殻に数々の美しい絵柄が描かれるのですが、これにはどのような意味があるのでしょうか。

地域によって異なりますが、ポーランド出身の知人に尋ねると、魚は信仰心を、牡鹿は死と再生を、小鳥は子宝を、樹木は永遠の若さを表わし、花は愛と慈悲、麦穂は暮らしの豊かさ、十字は結婚、波線は守護を象徴するのだと教えてくれました。

イースターエッグ展示風景 ポーランド

今回ご紹介する美しい彩色卵は、ウクライナ、チェコ、ポーランド、ルーマニア、ドイツで作られた伝統的な作品の数々です。ろうけつ染めの手法で模様付けされたもの、細密なペンで幾何学文様が描かれたもの、色つきの蜜蠟で表面を盛り上げるように彩色されたもの、農村に伝わる切り紙細工を張り付けたもの、卵殻の表面が繊細に彫刻されたもの…と様々な手法がみられます。

イースターエッグ展示風景 ルーマニア/チェコ/スロバキア

また、ここではロクロ挽きされた木の卵型にペインティングされたイースターエッグを展示するコーナー、イースターエッグにまつわる欧米の国々の風習について、絵本をまじえてご紹介するコーナーなどを設けています。


イースターの動物たち

〇うさぎ

ヨーロッパにおいて、卵を飾る習慣は、キリスト教よりもずっと古い時代から存在していました。
ユダヤ教の「過越の祭(すぎこしのまつり)」でも、新しい生命と信仰のシンボルとして卵が食べられました。またさらに古く、太陽信仰の時代においても卵は豊穣のシンボルとして重要な意味をもっていたといわれます。

ドイツをはじめとするゲルマン系の国々や英語圏では、春の祝祭・イースターには、ウサギが卵を運んでくる(あるいは産む)とされてきました(フランスやイタリアなど、ラテン系の国々では、教会の鐘が運んでくると考えられてきました)。ウサギは多産であることから、古来より、豊穣のシンボルです。また跳ねまわるウサギは命の躍動を表現し、その目が月(欠けて見えなくなってもまた満ちていく月をキリストの復活にみたてる)を連想させるとして、イースターと関連づけて考えられてきたようです。

ウサギの玩具や飾りものの愛らしさには、生命の源を抱えて春先の大地を跳ねまわるウサギたちへの、人々の深い愛情が感じられます。

イースターエッグを運ぶうさぎたち(ドイツ・エルツゲビルゲ地方)
ペンティングされたイースターエッグ(ドイツ)

〇ニワトリ

灯火が発達していなかった時代、夜は悪霊が跋扈(ばっこ)する恐ろしい暗闇でした。
〝朝を告げる鶏の声がどのような罪咎も白日のもとに曝してしまう〟と信じられたり、鶏が「太陽の化身」と考えられたのは、怖い夜のとばりを破る鶏の声に、人々が、明るい希望の光を招く霊力を感じていたからでしょう。

鶏の造形物は、また、目覚めの季節・「春の時間」などを象徴するものとして、世界各地で愛され続けています。イースター(復活祭)を彩るイースターエッグの多くも、鶏の卵から作られています。

このゾーンでは、鶏の造形物を通して、各地の人々が、鶏のどんな性質の興味を持ち、どんな姿態を愛したかにご注目下さい。

きびがら細工の鶏型エッグ・ホールダーとイースターエッグ(チェコ各地)


世界の鳥笛と発音玩具

このゾーンでは、春の訪れを象徴する鳥たちの鳴き声に注目し、鳥の鳴き声を模した木や土の鳥笛を各国から集めて展示します。

単音のみが響く笛、指孔を開閉させるカッコウ笛(二音笛)、簡単なメロディーを奏でるオカリナ、胴部に水を注いで振動させる水笛など、鳥笛のバリエーションを紹介します。高い音、低い音、やさしい音、かたい音・・・・・・鳥笛の音色は、それを作る民族の、音に対する好みを伝え、また鳥の鳴き声に対する感じ方をもよく表わしています。ロシアや中国など、ユーラシア大陸の超高音の鳥笛や、ドイツをはじめとするヨーロッパの楽音志向の鳥笛、日本の自然音に近い穏やかな鳥笛・・・それらの音を比較しながら展示します。
世界の鳥笛の愛らしい造形をお楽しみ下さい。

○単音の鳥笛

 アジア、ヨーロッパ、中南アメリカなどから土や木で作られた鳥笛を集めました。ヨーロッパや中国大陸、南アメリカ大陸の鳥笛は、超高音でピッー、ピッーと鳴るものが多く、日本や東南アジアでは、比較的やわらかく、中音域の音色をもった鳥笛が多く見られます。形を見ると、日本の鳥笛のほとんどが尾羽に吹き口(息を吹き込むところ)があるのに対して、中国やメキシコなどでは、鳥の脚やクチバシ部分に吹き口をもったものも目立ちます。

〇二音の鳥笛(カッコウ笛)

 鳥の背中や胴部に指孔が一つ設けられていて、そこを指で開閉することによって二つの音を奏でる鳥笛を集めました。二音をゆっくり響かせると「カッコウ」と鳴るので、郭公(かっこう)の形で作られていない場合も、二音の笛はカッコウ笛と呼ばれます。

 指孔をすばやく開閉させながら吹くと、小鳥のさえずりのような響きが得られます。かつて、ロシアや北ヨーロッパの国々では、森の中で吹き鳴らして鳥を目覚めさせ、ひと足早く春を祝うという風習もみられました。

ヨーロッパの鳥笛展示コーナー

〇鳥のオカリナ

  鳥笛の胴部に指孔が二つ以上設けられていて、そこを指で開閉することによって三つの以上の音を奏でる鳥笛を集めました。音が三つ以上揃うと、そこにはメロディーが生まれ、素朴な鳥笛に、楽器(オカリナ)としての機能が与えられます。鳥の声を自然音ではなく、楽音(音楽的な音)ととらえるヨーロッパの国々では、単音笛とならんで、メロディーを奏でられるオカリナ形の鳥笛が数多く作られてきました。そのことは、古代・中世の出土品や近世の文献に描かれる鳥笛の絵図などからも伺い知ることが出来ます。日本の郷土玩具に単音笛が多いことと比較すると面白い対比をなしています。

〇鳥の水笛

 空洞になった鳥の胴体部分(器状になっている)に水を入れた後、吹き口から息を吹き込んで音を鳴らします。息は、胴体部分にためられた水面を波立たせ、ピロピロピロ、ピチピチピチ・・・・と小鳥がさえずるような音色を奏でます。ドイツ、ハンガリー、ルーマニア、スペイン、ペルー、中国、日本などの水笛をご紹介します。

〇イースターの発音玩具

 かつて、教会の鐘は地域の人々に時を知らせ、様々な合図を送るものでもありました。イースター当日、鳴らすことを禁じられた教会の鐘に代わって、子どもたちが村中に時間を知らせていた“ラトルウォッチ”や“鳴き鶏”と呼ばれる発音玩具をはじめ、イースターを彩る楽しい玩具のいろいろをご紹介します。

イースターの発音玩具 ヨーロッパ各地のラトルウォッチ


<会期中の催事>
ワークショップ 「イースターエッグ」を作ろう
   日時=3月24日(日) 13:30~15:00


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