日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

春の企画展2 「江戸と明治のちりめん細工」

会期
2002年3月2日(土) 2002年6月18日(火)
会場
1号館
袋物の底の繊細なきりばめ細工

「ちりめん細工」は江戸時代からの歴史をもつ伝統手芸です。ちりめんは細やかな「しぼ」をもつ優しい絹織物で、300年ほど前の江戸時代から現在に至るまで、日本の着物の材料として愛好されてきました。そのちりめんの残り布を利用して作られたお細工物をちりめん細工と呼んでいます。江戸時代の後半、御殿女中や武家や商家など、裕福な家庭の女性達によって、美しく小さな袋物や小箱が生み出されました。ちりめん細工は小さな布裂も大切にする心、美的感覚、手先の器用さを身につける手芸で日本女性の教養のひとつでもありました。モチーフとして選ばれる花や動物、また器物の形には、日本人が伝えてきた吉祥や魔よけの文様が見出されます。

明治時代に入ると、ちりめん細工は女学生の教材として取り上げられ、女学生達は伝承に基づき、意匠をこらした佳品作りを競い合いました。『裁縫おさいくもの(明治42年)』『続裁縫おさいくもの(明治45年)』『裁縫おもちゃ集(大正6年)』〈いずれも大倉書店〉などは、女学校の教科書として書かれたちりめん細工の手引書として有名です。花や動物の袋物は香入れや琴爪入れとして、玩具や人形の袋物は子どもの御守りとして使用されたようです。中部地方には、ちりめんの袋物を嫁入り箪笥の上にのせて持参する風習も残されています。花嫁の幸福を予祝する縁起物であると同時に、裁縫の腕前を婚家に披露する意味もあったのでしょう。

こうして江戸時代から明治、大正、昭和と作り伝えられてきたちりめん細工ですが、戦争による世の中の混乱や生活様式の変化の中で、いつしか忘れられた存在になりました。日本玩具博物館は、ちりめん細工の伝える世界の素晴らしさに気付き、30年前より古作品や文献資料の収集を行うと共に、1986年より博物館活動の一つとして展示や講習会を行い、復興と普及に努めてきました。それが先駆けとなり、手芸の世界に大きな波を起こすまでに発展しています。

本展では、江戸末期から明治時代にかけて作られた古作品を「小裂で作る袋物~用と美~」「人形とおもちゃ~子どもの健康を願って~」「花鳥風月のお細工物~自然を題材にして~」「おめでたづくし~吉祥をあらわす造形~」「遊び心の生活小物~暮らしを楽しむ造形~」の5つの項目に分けて展示します。それらを再現し、現代的な応用を加えた作品群を合わせて紹介することで、江戸末から明治・大正時代、最盛期と呼べる時代のちりめん細工の性格について探ります。

展示総数 350点

おしどり袋一対


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