「七夕と夏まつり」 | 日本玩具博物館

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展示・イベント案内

exhibition
企画展

夏の企画展 「七夕と夏まつり」

会期
2011年6月18日(土) 2011年9月13日(火)
会場
1号館
「七夕の紙衣」展示風景

七夕の夜、短冊に願い事を書いて笹竹につるし、屋外に立てて天の川をのぞむ習俗は、今でも日本各地に伝承され、私たちは、七夕といえば、サラサラと鳴る笹竹の飾りや七夕の棚に供えた胡瓜や茄子の動物、朝一番で芋の葉に浮かぶ露をとって墨をすり、短冊に願い事を認めたことなどを想い起こします。

七夕は古代中国で発展した初秋の儀礼です。天の二星(牽牛星・織女星)に織物の上達を祈るもので「乞巧奠(きっこうでん)」と呼ばれていました。それが奈良時代の宮中に伝わり、やがて、祖霊祭としての「盆行事」や、実りの秋を前にした「豊作祈願」などとも結びつき、日本独自の発達を遂げていきます。

『案内者』(中川喜雲著/寛文2・1662 年刊)に記された江戸前期 京の町家の乞巧奠 

織物に加え、和歌や管絃、立花、香道などの巧を祈る芸能祭のような色合いを帯びるのは室町時代のこと。私たちが今日、知るところの笹飾りが盛んに行われるようになるのは、行事の担い手が寺子屋の子ども達の手に移ってからのことです。江戸時代後期、寺子屋では、七夕がくると、硯を洗い、稲の朝露で墨をすって、七夕の和歌を梶の葉や短冊にしたため、手習いの上達を願いました。

「五節句之内七夕」(歌川国芳画)に描かれた天保10年頃 江戸の町家の七夕飾り

高度経済成長期を境に一気に廃れ、家庭における七夕行事は今ではあまり見られなくなりましたが、本展では、着物に見たてた紙衣や人形、川に生える真菰(まこも)や藁で作る馬の造形を中心に、各地に伝承されるユニークな七夕の飾り物を集めて展示し、日本の七夕の豊かな世界を垣間見ていきます。あわせて、夏の夜祭りに登場する灯籠玩具や玩具の山車や屋台をご紹介します。

展示総数  約300点

 

★七夕の紙衣と船★

播州の「七夕さんの着物」と「七夕船」

 姫路では市川が播磨灘に注ぐ地方に「七夕さんの着物」という男女一対の素朴な紙衣が伝わっています。竹竿を紙衣の袖に通して飾られ、子どもが着物に不自由しないように願われました。飾るのは8月6日の夕刻からで、翌朝には川へ流されます。また、姫路市の港町・飾磨を中心とする地域には、昭和中期頃まで七夕の舟が見られました。天の川を渡る二星を運ぶ乗り物、あるいは盆を迎えるにあたっての精霊舟とも考えられます。

播磨灘沿岸の町々の七夕飾りには「七夕さんの着物」が登場する
姫路の七夕船(昭和30年代)

生野の七夕さん(兵庫県朝来市生野町)

 銀山で栄えた生野町の中心地でも、播州と同じ形の紙衣が飾られました。 二本の笹竹飾りの間に苧がら(皮をはいだ麻の茎)を渡して、一対から数対の「七夕さん」を吊るします。生野町では昭和30年代頃にこの風習は廃れてしまいましたが、平成10年代後半頃には復活を果たしています。ここでは、明治時代につくられた美しい千代紙製の「七夕さん」、明治42年生まれの長女のために父親が作ったと伝わる襖紙の「七夕さん」などをご紹介します。

銀山の町・生野の七夕飾りにも「七夕さん」が登場する

仙台の七夕飾り(宮城県仙台市)

 大きな吹流しをつけた商店街の大・七夕飾りが有名ですが、仙台の伝統的な飾りは、紙で作った七つ道具(短冊・紙衣・投網・巾着・吹流し・折り鶴・屑篭)を笹竹に並べて吊るすものです。七つ道具を吊るした昭和30年代と現在のミニチュア七夕飾りを展示します。

仙台の七夕飾り(ミニチュア)

★七夕の人形★

松本の七夕人形(長野県松本市)

松本の七夕人形は、男女一対の紙雛型や木製で着物を着せて飾る人形、流し雛型の紙人形など数種類があり、全国的に知られています。人形を飾る日は、ひと月遅れの8月7日前後、木や紙で作られた男女一対の人形は、子どもが初めて七夕を迎える祝いとして、親戚や近所から贈られ、着物を着せかけると、風通しのよい軒に吊るして飾られました。子どもの成長や健康を願い、また着物が増えるようにと祈りながら。

松本の七夕人形展示コーナー

尾山の七夕姉さま(富山県黒部市尾山)

 七夕が近づくと、女の子は姉さま人形を、男の子は満艦飾に仕立てた船を作り、8月7日の夜、尾山地区を流れる泉川に浮かべ流します。「七夕流し」と呼ばれ、江戸時代の終わり頃から続くユニークな七夕行事です。この行事に登場する大型の姉さま人形は、2003年、尾山在住の古老に製作していただいたものです。

尾山の七夕姉さま(2001年尾崎撮影)

★七夕の馬★

高山の七夕馬と糸車(岐阜県高山市松之木

 松之木町には、大八賀川の両岸に屹立する男岩と女岩を結んで大しめ縄をはり渡し、男児が生まれると藁馬を、女児が生まれると藁の糸車を縄に吊るす「七夕岩」の行事が、古く江戸時代元禄年間より伝わっています。この結界とも思われる大しめ縄は、七夕と盆行事とのつながりを伺わせます。地元で製作していただいた藁馬と糸車を、小さく作ったしめ縄に吊るして展示します。

高山松之木のわら馬と糸車

関東の七夕馬

 牽牛・織女の二星が巡りあう時、その 背に乗せて天の川を運ぶ七夕の馬が各地で作られてきました。関東地方を中心に、真菰、藁、菅などで男女一対の馬を作ってお供えし、牽牛・織女の再会を祈ります。大正時代に収集された千葉県や茨城県の七夕馬をご紹介します。

七夕馬展示コーナー

★夏まつりの玩具★

 日本全国いたるところに四季折々の祭礼があります。疫病や悪霊を退散させるもの、豊作を祈るもの、豊漁と海上の安全を願うものなど、人々は祭礼によって神を鎮め、その行事の中に、生きる上での願いや祈りを込めてきました。夏の祭礼は、京都の祇園祭を筆頭に、天災や疫病で非業の死を遂げた人々の怨霊を慰めるための祭り、災厄を払い、病魔を除け、身の健康を保つために神を祀る性質の祭礼が数多くみられます。祭りの日の露店では、祭礼の中心ともいえる山車、神輿、屋台などを単純化し、小さく作った玩具が売られ、子ども達は、これらで遊ぶことを通して、自分達の町の山車や屋台の形を、楽しみながら覚えていきました。

 このコーナーでは、夏まつりにちなむ各地の玩具と、夜を彩る灯籠玩具をご紹介します。七夕とも関わりの深い青森県の「扇ねぷた」や「金魚ねぶた」、秋田の「竿灯」祭りの人形、新潟県新発田の「金魚台輪」と村上の「鯛ぼんぼり」、出雲大社の「ジョーキ」や「鯛車」、山口県柳井の「金魚提灯」など、情緒豊かな夏の灯籠玩具は見どころです。

夏まつりの祭礼玩具展示コーナー


<会期中の催事>
記念講演会① 「日本の七夕習俗について」
    日時=7月3日(日) 13:30~
記念講演会② 「七夕伝説と日本各地の行事への拡がり」
    日時=7月31日(日) 14:00~


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