日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

展示・イベント案内

exhibition
特別展

冬の特別展 「世界のクリスマス*祈りの造形」

会期
2022年11月3日(木) 2023年1月22日(日)
会場
6号館

キリスト教世界の人々にとって、クリスマス(降誕祭)はイースター(復活祭)と並んで一年で最も大きな行事です。12月に入ると、聖バルバラの祝日(4日)、聖ニコラウス祭(6日)、聖ルチア祭(13日)、聖トーマスの祝日(21日)など、キリスト教の聖人を冠した祭礼が続き、各地それぞれに伝統的な行事を重ねながら、クリスマス(25日)を迎えます。家々の窓辺にはキャンドルの灯が揺らめき、伝承のオーナメント(=装飾)が美しく飾られて、町全体でクリスマスを祝う雰囲気を盛り上げていくのです。

きびがら細工のキリスト降誕人形・ベトレム (チェコ/トウモロコシの皮/1980年代)

古代ヨーロッパでは、太陽が力を失い、地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に光の復活を願い、新年の豊作を祈る祭を行っていました。キリストの降誕を祝うクリスマスは、冬至祭や収穫祭など、土着の信仰をとり込むことを通して、大きな行事へと発展していったと考えられます。クリスマスに登場するキャンドルの温かな灯や光を象徴する造形の美しさ、また麦わらやきびが(トウモロコシの皮)、カシの枝や丸太、木の実など、作物や森の実りを表現するオーナメントの多様性からも、クリスマスがもつ奥行の深さをうかがい知ることが出来ます。

恒例となった当館のクリスマス展は、クリスマスオーナメントや人形、玩具を通して世界各地のクリスマス風景を描き、この行事の意味を探る試みです。本年はテーマを二つ設けました一つ目目のクリスマス・祈りの造形では、「待降節のカレンダー」「キャンドスタンドと光の造形」「キリスト降誕人形」「サンタクロースと冬の贈り物配達人」「クリスマス菓子とオーナメント」「自然素材のオーナメント」の6つの項目でクリスマス造形の意味とデザイン様式を探ります。そして、二つ目のヨーロッパクリスマス紀行では、北欧、中欧、南欧、東欧の4つの地域に分けて展示し、各地のクリスマス飾りの特徴を紹介します。

本場ヨーロッパの伝統的なオーナメントはもちろん、アフリカやアジアの民芸的な造形も見どころです。世界各地の民族色豊かなクリスマス飾りが一堂に―――。人々の喜びと祈りが込められた造形文化に、あたたかなまなざしを注いでいただければ幸いです。

展示総数 世界53ヶ国より約1,000点

<クリスマス祈りの造形>
待降節のカレンダー 
 クリスマス(降誕節)を迎える準備期間を「待降節(アドベント)」と呼びます。キリスト教国では、待降節が巡ってくると、緑の葉で輪を作り、等間隔に4本のキャンドルを立てた「アドベント・クランツ」や「アドベント・キャンドル」が家庭に登場します。クリスマスを待つ4週間を表し、日曜日ごとに1本ずつ灯を増やし、その灯の下で家族揃ってキャロルを歌って祝います。ドイツやデンマークでは、12月になると、子ども部屋に「アドベント・カレンダー」が飾られます。クリスマスの風景が描かれた絵の中に、1から24までの数字がついた窓があり、12月1日から毎朝、窓を開けていきます。めくる窓ごとに楽しい絵が描かれていて、クリスマスを待つ気持ちを高めてくれます。

麦わら細工のアドベント・クランツ(ハンガリー・ブダペスト/麦わら/1990年代)

クリスマス菓子とオーナメント 
 クリスマスオーナメントの中には、ドイツの「レープクーヘン」や「シュプリンゲルレ」、中欧各国の「シュペキュラティウス」、ヨーロッパ圏のジンジャークッキーのように数多くの菓子が登場します。それらの菓子には、生命の源を支える麦はもちろん、薬効のあるスパイスや豊かな実りを象徴する木の実がふんだんに使われています。これらは、冬枯れの季節、人々に栄養をもたらす食物であると同時に、あの世から戻ってくる祖霊や、大地に眠る霊への供物でもありました。ここでは、チェコのパン細工やセルビアのアイシング・クッキーのツリー飾り、ドイツの胡桃とプラムの人形「ツヴェッチゲンメンレ」、フランスの公現節(エピファニー)に、王様ケーキの中に仕込む小さな陶器製人形「フェーヴ」などを紹介します。

自然素材のオーナメント* 
 クリスマスには、スウェーデンやフィンランド、ドイツ、スイスなどの麦わら細工の飾り、ハンガリーやスロバキアなどのきびがら(トウモロコシの皮)細工の飾りなど、収穫された穀物を象徴する造形がくり返し登場します。また、林檎や胡桃などの木の実をテーマにしたもの、木の実を生み出す木々の“丸太”を象徴するオーナメントも各地で作られています。これらには、実りをもたらす穀物霊や森の樹木に感謝を捧げ、新年の豊穣を願う心が込められたものと考えられます。

キリスト降誕人形 
 キリスト降誕人形は、中世の宗教熱の中、イタリアで作られ始めた箱庭風のクリスマス飾りです。馬小屋の飼葉桶に誕生したイエス、見守るマリアとヨゼフ、誕生の知らせを聞いて駆けつけた羊飼い、東方から捧げ物を持ってやってきた三人の博士など、キリスト降誕の物語を人形によって表現していくものです。キリスト教の普及とともに、中南米やアフリカ、アジアの国々でも民族色豊かなキリスト降誕人形が作られるようになりました。世界各地の資料を地域ごとにご紹介します。

キリスト降誕人形 
上段=スペイン(粘土細工)・チェコ(パン細工)・ドイツ(ろくろ挽き) 
下段=ジンバブエ(木彫)・ペルー(ジャガイモ&粘土細工)

光の造形とキャンドルスタンド 
 北半球において、12月21~22日といえば、太陽の照る時間が一年で最も短い冬至にあたります。冬至に向かって太陽の光は弱くなりますが、この日を過ぎると、日照時間はどんどんとのびていきます。この世に光をもたらす救世主と信じられるキリスト誕生の祝いは、冬至を過ぎて再生した太陽を寿ぎ、春への期待をふくらませる祝日でもありました。クリスマス飾りの中には光を象徴するものが目立ちます。このコーナーでは、光を美しく暖かく見せる工夫に満ちた各地のキャンドルスタンドをはじめ、光をイメージしたオーナメントの色々を展示します。

クリスマスツリーのオーナメント「太陽」の造形 
上段=デンマーク(切り紙細工)・チェコ(硝子細工)・ドイツ(ガラス細工) 
下段=ラトビア(柳細工)・オーストリア(麦わら細工)・ドイツ(レース細工)

サンタクロースと贈り物配達人* 
 サンタクロースは、紀元280年頃、今のトルコに生まれ、のちにキリスト教の司教となった聖ニコラウス(セント・ニコラウス=オランタ語でシンタクラウス=アメリカ英語でサンタ・クロース)がモデルです。情け深く、貧しい人々を救け、子どもを可愛がったので、子どもや弱者を守る聖人として敬われました。この聖ニコラウスが貧しい人々に贈り物をしたり、困っている人に金貨を授けたりしたという伝説と、遠い昔、冬至の祭に新年の豊かさを祈って、人々が贈り物を交換していた習慣が溶け合って、クリスマスの贈り物配達人が誕生したといわれています。
 国によって贈り物配達人のイメージも様々。ドイツやオーストリアの聖ニコラウスやチェコ、スロバキアなどの聖ミクラーシュには、生命の死と再生を司る来訪神のイメージがあり、北欧のユール・トムテやユール・ボックには、人々に豊穣をもたらす自然神のイメージがあります。トナカイのひく橇に乗ってやってくる明るくやさしいサンタクロースのイメージは、19世紀のアメリカ合衆国で形成され、日本のサンタに影響を与えました。ここでは世界各地の様々な贈り物配達人を、その伝説とともに紹介します。  


<ヨーロッパクリスマス紀行> 
北ヨーロッパのクリスマス 
 冬の間はほとんど陽がのぼらず、雪や氷に閉ざされる北欧の国々にあっては、太陽の復活を願う民俗信仰が根深く生き続けてきました。太陽が死に向かっていく季節に大挙して現れる死者の霊をなぐさめるために、人々は特別な食物を準備し、神話の神々、なかでもオーディンの神に豚や猪などを捧げて新年の豊穣を願いました。太陽の再生を願う冬至の祭礼は“ユール”と呼ばれ、13世紀ごろにはキリスト降誕祭と結びついて、クリスマスの行事を表わす言葉となりました。暗く厳しい北欧の冬、人々は、太陽を象徴するキャンドルを窓辺に点し、清らかな行事の雰囲気を盛り上げて行きます。
 室内で過ごす時間の長さから、手工芸が発達し、クリスマス飾りにも、切り紙細工や麦わら細工、白樺の皮細工、柳の皮細工などが数多く見られます。家の守り神として親しまれているトムテ(スウェーデン)やトントゥ(フィンランド)たちが愛らしい人形として登場し、麦わらで細工された大小のヤギが町中を彩ります。

東ヨーロッパのクリスマス  
 東欧では、冬至祭や収穫祭に結びついた民族色豊かなクリマスが祝われています。チェコやスロバキア、ハンガリー、セルビアの麦わらやきびがら(トウモロコシの皮)、木の実細工のツリー飾りには収穫祭との深い結びつきが感じられます。パン生地を細工し、焼き締めて作られるチェコのオーナメントや日本の正月の注連飾りを想わせるセルビアの麦わらとオークの枝を束ねたオーナメント「パドニャック」などには、キリスト教が根付く以前からの民間信仰が表現されているようです。
 また、木綿レースや硝子細工のツリー飾りは、東欧伝統工芸の素朴さと繊細さを伝えています。

中部ヨーロッパのクリスマス
 ドイツ、オーストリアなど中部ヨーロッパにおいても、待降節の平均日照時間は1~2時間。冬枯れの町には寂しさを払うようにモミの木の緑とキャンドルの光が溢れます。町々の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットがたち並び、細工を凝らしたオーナメントの数々が人々を温かく出迎えます。きらきら輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りも「光」を表現したものです。
 ドイツのクリスマス
 ドイツのクリスマスにプレゼントを運ぶのは、聖ニコラウスやヴァイナッハマンと呼ばれる聖人ですが、地域によっては鬼を従えてやってきます。クリスマスツリーの本場とあって、豊富な造形が見られる地域です。また、クルミ割り人形や煙だし人形、「光のピラミッド」の名で親しまれるユニークなキャンドルスタンド、キリスト降誕人形「クリッペ」など、“おもちゃの国”ならではのクリスマス飾りを一堂に紹介します。

南ヨーロッパのクリスマス 
 イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには、“サトゥルナーリア” と呼ばれる賑やかな収穫祭の薫りが残されているといいます。また、カトリック信仰が篤いイタリアは、キリスト降誕人形の発祥した地であり、大小様々な降誕風景の箱庭を見ることができます。イタリアやポルトガルからは「プレゼピオ」、スペインから「べレーン」「ナシミエント」、フランスからは「クレーシュ」と呼ばれる降誕人形を展示します。

キリスト降誕人形・クレーシュ(フランス・プロヴァンス地方/土/1980年代

<会期中の催事>
展示解説会  自由参加制(入館料が必要)
 恒例の展示解説会では、世界各地のクリスマス飾りの特徴について、当館学芸員が展示品を取り出してご案内いたします。ドイツをはじめ、各国のキャンドルに火を点します。
日時=11月23日(水・祝)・12月4日(日)・11日(日)・18日(日) ・25日(日)   各回14時30分~

絵本朗読会 自由参加制(入館料が必要)
 クリスマス人形やクリスマス飾りが登場するクリスマス絵本の世界を、倉主真奈さんの朗読とともにご案内します。下記の日時、6号館特別展示室へお集まりください。
日時=12月18日(日)  13:30~ /15:00~
会場=6号館特別展示室

ワークショップ 申込制
 ツリー飾り*「ビーズワーク・フェルトのオーナメント」(ドイツ)
日時 12月10日(土) 13時30分~15時
詳しくは、追ってご案内いたします。



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