「ふるさとの武者人形」 | 日本玩具博物館

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exhibition
特別展

初夏の特別陳列 「ふるさとの武者人形」

会期
2026年4月25日(土) 2026年6月28日(日)
会場
6号館西室

現在、端午の節句といえば、屋外に鯉のぼり、室内には甲冑などを飾って、男児の健やかな成長と幸福を願う行事です。端午の節句(節供)は、平安時代に中国から伝わったものとされていますが、時代を経るにつれ、日本人の季節に対する観念や信仰などを取り込んで発展していきました。そのはじめは、春と夏の節目に、人々を襲う邪気を払い、心身の健康を獲得するための行事だったようです。

端午の節句は「菖蒲の節供」と言われるとおり、古くから菖蒲や蓬(よもぎ)が盛んに飾られましたが、これは香の強い植物に辟邪の力があると信じられたためです。また端午の頃は、農耕暦の中でも、田植えを行う重要な季節。鯉のぼりなどの大きな幟(のぼり)には、田に訪れる神を迎える招ぎ代(おぎしろ)としての意味を見ることもできます。中世に入ると、武家の興隆の中で、菖蒲が「尚武」の語音と通じることから、菖蒲の節句は、男児の祝儀と結びつき、武家の将来を祝福する行事へと展開します。それが、江戸時代に入ると、男児の出世と幸福を願う庶民の節句まつりへと発展していくのです。

江戸時代前期の頃は、家の門口の菖蒲兜、毛槍、長刀などの武具や幟を勇ましく立てる屋外飾りが主流でした。そこへ中期以降、武者人形などのつくり物を室内に飾る風習も加わります。後期には、屋外・室内飾りともに大型化し、都市の富裕階級は、豪華な飾り付で家の権勢を競い合いました。今日の節句飾りは、江戸時代に比べ、ずいぶん小型になっていますが、その様式化された飾り物の中には、古い時代の華やかな屋外飾りの要素を伺うことも出来ます。

本展では、江戸末期から明治・大正時代にかけて、京阪地方で飾られた武者姿の人形飾りを展示し、合わせて、庶民の間に人気を博した人形飾り――土や紙など身近な素材を利用して量産され、かつての農村の五月を彩った金太郎、武者、力士、張り子の虎等をご紹介します。加えて、戦前、庶民の間で人気を博した端午の掛け軸飾り、鯉のぼりなどを合わせて明治・大正・昭和の素朴な節句飾りをしのびます。

展示総数  約200点

一節 京阪地方の武者飾り~衣装を着けた武者人形〜

江戸後期から明治・大正時代、和漢の歴史物語に登場する大将と従者を鎧姿で人形化した一式が、京阪地方を中心に人気を博しました。なかでも、神功皇后(応神天皇の母)と忠臣の武内宿禰、また太閤秀吉と家来の加藤清正は、特に愛された主従の組み合わせです。国体意識の高まる明治・大正時代、国の武運長久を祈り、男子の成長と出世を祈念するにふさわしい人物像と考えられたためでしょう。
このような武者人形を主役に、軍扇や陣笠、陣太鼓や白馬などを添え飾る様式は、昭和時代以降、甲冑を主役とする座敷飾りに押されて退潮していきます。
ここでは、明治・大正時代に京阪地方で飾られた大型の武者人形をご紹介します。

京阪地方の武者飾り(明治末期)


第二節 ふるさとの武者人形
 江戸時代後期、豪華な衣装をまとった武者人形や甲冑飾りが都市部の裕福な人々のものとして発展を遂げて行く一方、封建色の強い各地の農村部などでは身近にある安価な材料を用い、自給自足的に武者人形が作られました。土製のもの、反故の紙を利用した張り子製のもの、家具類製作時にでる木屑に糊を混ぜた練り物製のもの、また木製や裂製のものなど、土地土地に独特な着想で製作され、郷土の人々に歓迎されました。これらは、武者飾りが画一化する前の個性的な人形で、日本の人形史上に魅力を放っています。

<金太郎> 金太郎は相模の足柄山で山姥の子として生まれ、のちに源氏の武将、源頼光の四天王となった坂田金時の幼名。熊、鹿、猿などと相撲を好む金太郎は、全身が赤く、剛健な子どもの象徴として親しまれてきました。江戸末期になると、この土人形が全国各地で愛され、明治時代には、端午の節句人形の代表となりました。力強さの表現には子どものが丈夫に育つようにとの願いが、金太郎の全身が赤い表現には疱瘡よけや悪病払いのまじないとしての意味が込められています。

全国各地の産地に影響を与えた伏見土人形・金太郎(明治末期)

<武者人形> 神功皇后と武内宿禰、楠木正成、牛若丸と弁慶、太閤秀吉と加藤清正、和藤内など、和漢の歴史物語、芝居などに登場する英雄、豪傑などを人形化したもの。江戸初期には、飾り兜を他の武具類や幟とともに屋外に飾る風習がありましたが、この飾り兜が武者人形誕生の母体となりました。このコーナーでは、江戸末期から明治・大正・昭和初期を通じて、全国各地の郷土人形の産地で作られ、地方都市や農村部で愛された土製や張子製の武者を展示します。

郷土の武者人形  大浜土人形・桶狭間の義元と信長(愛知県碧南市/昭和中期)


<張り子の虎> 端午の虎は邪気を払う霊獣として中国でも篤く信仰れている動物です。剛健で堂々とした虎の姿に、理想の男児像を託して、西日本を中心に、端午の虎飾りが流行しました。首ふり虎のほか、加藤清正の虎退治に因んだもの、『国性爺合戦』の和藤内と組み合わせたものなどが見られます。


<端午の掛け軸飾り> 掛け軸に、節句飾りの様子や武者絵などが描かれた掛け軸は、場所もとらず、比較的安価であるため、明治末期から昭和初期にかけて盛んに飾られました。かつての端午の節句飾りの様子や、当時の風俗を物語る資料としても貴重です。


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前の特別展 → 春の特別展「雛まつり~まちの雛・ふるさとの雛~」
同時開催 → 初夏の特別陳列「ふるさとの雛人形」※Coming soon