「雛の世界」 | 日本玩具博物館

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特別展

春の特別展 「雛の世界」

会期
2007年2月3日(土) 2007年4月10日(火)
会場
6号館
「風流古今十二月ノ内弥生」(三枚続きの一枚) 三代歌川豊国 天保(1830-1844)頃

雛飾りに人形や諸道具を飾るための雛段が見られるようになったのは江戸時代のこと。初期の頃は、毛氈などの上に紙雛と内裏雛だけを並べ、背後に屏風を立てた平面的な飾り方で、調度類も少なく簡素なものでした。雛まつりが盛んになるにつれて、雛人形や添え飾る人形、諸道具の類も賑やかになり、段数も増えていきます。安永年間(1772~81)には4~5段、天保年間(1830~44年頃)には、町家の十畳座敷いっぱいを使うような雛段も登場してきます。

江戸を中心に「段飾り」が発展する一方、上方では「御殿飾り」が優勢でした。建物の中に内裏雛を置き、官女、随身、仕丁などの人形を添え飾るものです。御殿飾りは明治・大正時代を通じて京阪神間で人気があり、戦後には広く西日本一帯で流行しました。

日本各地の町々では、江戸や京阪で飾られる雛人形に影響を受けながらも、幕末頃から地域独自の雛飾りを発展させていきます。都市部の人形屋から安価な頭を取り寄せて、地元で衣装を着付けたものが飾られ、また、城下町を中心に押絵の人形が雛飾りとして歓迎された時代もありました。一方、農村部では、粘土をこねて焼成する土雛が雛段を賑やかに彩りました。

現在、私達は、雛飾りといえば、五段あるいは七段の段飾りを思い浮かべますが、昭和初期頃までは関東と関西の違いのみならず、城下町や地方都市、農村部など、土地によって異なる雛の世界がありました。本展では、そうした地方の雛飾りにも焦点をあて、祖先が愛してきた雛人形の多様性をご紹介します。

  

江戸後期から明治時代の雛人形

立ち雛、享保雛、古今雛など、江戸時代に現れた雛人形の様式の色々をご紹介します。また、江戸時代の様式を受け継いで明治時代に作られた都市部の雛人形を展示します。

これらの時代の雛人形は、同じ様式でも江戸と京阪では表情や衣装にも違いが見られました。「古今雛」を例にあげると、玉眼を用い、はっきりとした目鼻立ちの江戸型古今雛に対して、描き眼で静かな顔立ちの公家風が京阪型古今雛です。女雛の袖まわりや檜扇の持ち方などを見ても、江戸と京阪を比較すると、表現が異なっていることに気づかれるでしょう。

江戸時代や明治時代の雛人形は、今の人形とは違って、年齢によって眉や鉄漿(おはぐろ)、結髪の形などをきちんと区別して作られていますので、人形の細部をじっくりとご覧下さい。

雛飾りのいろいろ

<御殿飾り・源氏枠飾り・段飾り>

江戸時代後期、天保8(1837)年頃に喜田川守貞が著した『守貞漫稿』には京阪と江戸の雛飾りの違いが記されています。

「…京坂の雛遊びは、二段ほどの段に緋毛氈をかけ、上段には幅一尺五寸、六寸、高さもほぼ同じ位の屋根のない御殿の形を据え、殿中には夫婦一対の小雛を置き、階下の左右に随身と桜橘の二樹を並べて飾るのが普通である。…江戸では段を七、八段にして上段に夫婦雛をおく。しかし御殿の形は用いず、雛屏風を立廻して一対の雛を飾り、段には官女、五人囃子をおく。…」

このように、江戸時代後期頃、江戸の段飾りに対して、京阪では御殿飾りや御殿の屋根のない源氏枠飾りが一般的であったことがわかります。

源氏枠飾りと芥子雛(明治中期)

地方の雛人形1 田舎雛と押絵雛

江戸や京阪の人形屋から安価な頭を取り寄せて、地元で衣装を着付けたものが盛んに飾られました。衣装や人形の持ち物も、大都市部に普及していた町雛に比べて入手しやすい裂が使用され、一般に「田舎雛」の名で呼ばれています。
また、城下町を中心に押絵の人形が雛飾りとして歓迎された時代もありました。明治・大正時代は、歌舞伎をテーマに作られた押絵人形ばかりが並ぶ雛飾りも見られました。ここでは、各地に伝承される田舎雛や押絵雛段飾りを展示します。長野県松本や大分県日田の雛人形が見どころです。

地方の雛人形2 土雛と張子雛

日本各地の農村部では、江戸時代終わり頃になると、身近で手に入りやすい土を型に押して数多くの土人形が焼かれるようになります。内裏雛や三人官女などをかたどったものも見られますが、地域によっては、雛飾りの上段に天神人形を飾り、娘姿の人形や恵比寿・大黒などの縁起物人形、武者人形などがぎっしりと段を埋め尽くす土雛飾りもありました。ここでは、兵庫県但馬地方や丹波地方を取り上げ、特徴的な土雛飾りをご紹介します。
また、福島県三春で古くから飾られてきた張子雛の段飾りも展示します。


<会期中の催事>
解説会
   日時=2月12日(月/祝)・3月3日(土)・11日(日)・21日(水/祝)    
      ※各日 14:00~


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前の特別展 → 冬の特別展*2006「世界クリスマス紀行」
同時開催の特別陳列 → 春の特別陳列*2007「源氏枠御殿飾り」
次の特別展 → 初夏の特別展*2007「端午の節句飾り」