「端午の節句飾り」 | 日本玩具博物館

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特別展

初夏の特別展 「端午の節句飾り」

会期
2020年4月18日(土) 2020年7月5日(日)
会場
6号館西室

緊急事態宣言を受けて休館が長引いておりますので、6月21日(日)まで予定していた本展の会期を、7月5日(日)まで延長いたします。



端午の節句(節供)は、平安時代に中国から伝わったものとされていますが、時代を経るにつれ、日本人の季節に対する観念や信仰などを取り込んで発展していきました。

端午の節句は「菖蒲の節句」と言われるとおり、古くから菖蒲や蓬(よもぎ)が盛んに用いられましたが、これは香の強い植物に辟邪の力があると信じられたためです。中世、武家の興隆の中で、菖蒲が「尚武」の語音と通じることから、菖蒲の節句は、男児の祝儀と結びつき、武家の将来を祝福する行事へと展開します。それが、江戸時代に入ると、町家においても男児の幸福を願う節句まつりへと発展をみます。

江戸時代前期の頃は、家の門口の菖蒲兜、毛槍、長刀などの武具や幟を勇ましく立てる屋外飾りが主流だったのが、武者人形などのつくり物を室内に飾る風習も加わります。後期には、外・室内飾りともに大型化し、都市の富裕階級は、豪華な飾り付けで家の権勢を競い合いました。

江戸時代前期の五月節供の外飾り 『日本歳時記』(貞享5・1688年刊)より


今日の節句飾りは、江戸時代に比べ、ずいぶん小型になっていますが、その様式化された飾り物の中に古い時代の華やかな屋外飾りの要素を伺うことも出来ます。

大正~昭和時代初期の座敷飾りに見られる武者幟


京阪地方において、明治・大正時代は、江戸時代の流れを受け継ぎ、大将と従者の武者人形が主人公で、甲冑飾りはむしろ脇役だったのが、戦後になると、甲冑飾りの方が主、武者人形は小型化して、座敷飾りの下部に飾られるようになります。

本展では、そのような近世の町家における節句飾りの歴史を受け継ぎ、明治・大正・昭和時代に町家で飾られた武者人形や甲冑飾りを展示し、各時代に人気を博した節句飾りの様式をご紹介します。

展示総数 約30組100点

武者人形

武者人形は、端午の節句に飾られる 鎧(よろい)や兜(かぶと)をつけた武者姿の人形。江戸時代中期頃から明治・大正時代までは屋内飾りの中心でした。和漢の歴史物語や芝居に登場する勇ましい英雄を人形化したもので、神功皇后と武内宿禰、秀吉と清正、義経と弁慶などが代表的です。一時は等身大に及ぶ大型の人形も登場しましたが、昭和以降は甲冑飾りに押されてしだいに作られなくなりました。昭和時代に入ると、関東製の小型の武者人形が百貨店などを通じて全国に普及します。

武者人形・神功皇后と武内宿禰(明治中期)
武者人形・応神天皇と武内宿禰(大正9年/田中彌・京都製)

甲冑飾り

武士の誉れの象徴として登場した鎧や兜の甲冑飾りが町家で飾られるようになるのは江戸時代中期以降のこと。始まった頃の飾り兜は、支柱にかぶせて置かれていたのが、明治時代になると、 胴が膨らんだ鎧櫃(よろいびつ)に甲冑が飾られるようになります。唐櫃(からびつ)に飾りつける豪華な甲冑に弓矢・太刀飾り、陣笠・軍扇・太鼓飾りを合わせた節句飾り一式が販売され始めるのは明治末から大正時代です。人形店ばかりでなく、百貨店がプロデュースしたものも見られました。太平洋戦争を経て、日本の復興が果たされる昭和20年代後半から30年代、緑毛氈に矢襖(やぶすま)や金屏風を立て、甲冑を中心とした段飾りが全国津々浦々に普及をみます。

矢襖を背景に甲冑飾り(明治~大正時代) 
甲冑飾り(江戸時代末期~明治時代)

鯉のぼり

今や端午の節句の象徴とされる鯉のぼりですが、誕生したのは思いの外遅く、江戸の町人文化が独自の発展を遂げる江戸後期(19世紀)まで待たねばなりません。発想のもとになったのは、滝が連なる竜門の激流を上りきった鯉だけが竜(=皇帝の象徴)に転身するという中国の伝説です。鯉のぼりは竜門を越えて天に放たれた鯉であり、江戸庶民はその奇抜な造形に目を輝かせたことでしょう。地方都市へも鯉のぼりが普及した明治時代、勤勉と忍耐を徳目として立身出世を目指す時代精神は真鯉を重んじました。昭和時代に入って鯉が家族を増やすまで、鯉のぼりといえば真鯉一旒のみ。展示室には明治時代の空を泳いだ紙製真鯉を掲げています。

端午の掛け軸飾り・太閤秀吉と加藤清正
展示室の天井を泳ぐ真鯉(明治時代中期/紙製)


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