「タピラペの少女のポシェット」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2021年10月

「タピラペの少女のポシェット」

  • 1990年代
  • ブラジル・マットグロッソ州/木綿・コンゴウインコの羽根

タピラペ族(Tapirapé)は、ブラジル内陸部マットグロッソ州のウルブランコ山地などに居住する先住民で、熱帯雨林の森で狩猟と採集を行い、焼き畑農業を生業として移動しながら暮らしてきました。太古の人間が皆そうであったように、暮らしに必要なものは、材料も道具もすべて自らの手で作り出す技能を具えた人々です。それが20世紀初頭以降、近代文明との接触によって生活環境が徐々に変容し、居住地や生業についての難しい問題にひとつひとつ対応を迫られるなかで、彼らが長く伝えてきたモノづくりの文化も変わりゆく最中にあるといいます。

彼らが作り出す道具のなかに木綿糸を細やかに編んだ小さなかごあります。木綿を育て、綿をとり、糸つむぎの道具や編み針作りがそろわなければ、生み出せない品です。均一にそろった細かい編み目も、炭色に染めた木綿色が作る縞模様の入り方も美しく、タピラペの女性たちがどれほどの時間をかけ、ひと目ひと目を丁寧に作り上げたかを想うと、愛おしさがこみあげてきます。

編み手の想いがこもった小かごをさらに愛らしく暖かにみせているのは、下げ紐の根元に飾られた羽根の明るい彩りです。タピラペの人々は様々な鳥を部族グループの象徴として戴いており、コンゴウインコやタカ、サギなどの羽を仮面や衣装に多用します。コンゴウインコの朱赤と黄色の小さな羽は少女たちの耳飾りや首飾りにも使われ、鮮やかな羽飾りが軽やかに揺れるタピラペ少女のファッションは、深い緑の森や湿潤な大地に映えて美しいことでしょう。

(学芸員・尾崎織女)