「木彫彩色の機関車」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2026年10月

「木彫彩色の機関車」

  • 1980年代中ごろ
  • バングラデシュ・ダッカ/木

●当館の井上重義館長が世界の玩具収集を志した1970年代末から80年代にかけての日本には、様々な国や地域の手工芸品を輸入販売する専門業者がすでに立ち上がっており、彼らを通じて多くの民族色豊かな玩具に到達することができました。ときには当館の収集活動の趣旨を伝え、現地視察の際に当館が求める品をすくいあげてもらうこともありました。東南アジアの生活雑貨を扱うT社やM社、東アフリカの民芸品を扱うA社、西アフリカや南アフリカの物産を専門とするAS社、中南米の手工芸品を紹介するG社やTC社、世界各地の民族楽器を扱うTH社、東欧の木製玩具を輸入するGI社、旧ソビエト連邦の民芸品を扱っていたBS社などは、当館の博物館活動にとってかけがえのない存在でした。

●一方、国際見本市などに出向き、優良な民芸玩具や近代玩具の製作販売を行う事業所を探し出す、また、在外公館に依頼して当該国の玩具の産地や製作者の情報を得る、――井上館長が用いたこれらの方法によって、収集のフィールドはアフリカ大陸の小国や太平洋に浮かぶ島国へと拡大しました。そのようにして1980年代から90年代にかけて精力的に収集した世界各地の玩具は、一時代が過ぎ去った今、当館の貴重なコレクション群を形成しています。

●今回、紹介する玩具は、1980年代の中ごろに、在バングラデシュ日本国大使館から頂いた情報をもとに入手した木彫彩色の機関車です。バングラデシュの鉄道といえば、かつては都市を走る列車の恐るべき風景が有名でした。客車内はもちろんのこと、屋根の上にぎっしり並び座る人々を乗せて、ものともせずに客車を引っ張る逞しい機関車、———そんな強靭な機関車への人々の親しみと信頼を表現するように、玩具の機関車はどっしりとした重量感にあふれています。強く押すと、四つの車輪が回転してゴトゴトと走ります。一方、煙突は黒いボタンのようで愛らしく、桃色に塗られた側面のカッティングラインや青い屋根に描かれた花文様は装飾的で、無機質機関車にどこか優雅な雰囲気を与えています。近代的な題材にあっても、造形感覚にはバングラデシュの民族色が表われていて、楽しい玩具です。



●このとき、機関車の玩具とともに、象や馬、ヒョウの玩具、また馬車なども同時に入手しており、いずれも、身近な動物に対する観察力に基づき、勢いのある確かな彫刻の技によって作り出された造形には、今にも動き出しそうな生命感があふれています。

●これらは、4号館2階の常設展「アジアのおもちゃ」コーナーでご覧いただけます。

(学芸員・尾崎織女)