日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ Toys of this month

2010年11月

「セルロイドのサンタクロース」

  • 昭和初期
  • 日本/セルロイド

 現在、6号館で開催中の特別展「世界クリスマス紀行」に、今年は「日本のクリスマス」のコーナーも設けています。その中から初公開のサンタクロースをご紹介します。

 日本のクリスマスの祝会に、サンタクロースに扮する人物が初めて登場したのは、明治7(1874)年のことで、“殿様スタイル”であったと伝えられています。そして、最初にサンタクロースが描かれたのは、明治31(1898)年、日曜学校の子ども向け教材『さんたくろう(三太九郎)』という読本の扉絵。ロバを従え、右手にはクリスマスツリー、左手には杖を持ったドイツ系のサンタクロース「聖ニコラウス」や「ヴァイナッハマン」を彷彿させるスタイルで描かれています。

 大正時代に入ると、児童向け雑誌『子供之友』などにも、赤い帽子に赤い服を着て太いベルトを腰に巻いた、現代と変わらないイメージのサンタクロースも盛んに描かれるようになります。トナカイのひくそりに乗ったサンタクロースが日本に定着するのは戦後のこと。国の復興を志す日本人にとって、サンタクロースは、アメリカ合衆国からもたらされる豊かな生活文化の象徴でもありました。

 ご存知のように、サンタクロースは、聖ニコラウスの祭りをベースに、アメリカ合衆国において育まれたイメージです。1822年、神学者クレメント・ムーアが書いた『聖ニコラウスの訪問』や、風刺画家トマス・ナストの挿絵は、アメリカ合衆国のサンタクロース像の醸成に大きく寄与し、20世紀に入ると、たくさんの挿絵画家や絵本作家がそのイメージを膨らませ、継承していきました。

 ドイツ系の「聖ニコラウス」から、アメリカ系の「サンタクロース」へ。写真でご紹介する昭和初期、つまり1930年代のサンタクロースは、長いローブをまとって、妙に真面目な表情と佇まい・・・。サンタクロース過渡期のイメージをよく伝えているように思います。  

 一方、昭和初期の日本は、玩具の製作技術が進歩を背景に、セルロイド玩具の生産額が世界一となり、セルロイドのキューピー人形が爆発的な人気を得ていました。軍事色に染まっていく時代を前に、セルロイドのサンタクロースは、素材の持つやわらかさや色鮮やかさとあいまって、大正ロマン・昭和ハイカラ時代への郷愁を呼び起こすようです。