「鯨の潮吹き」 | 日本玩具博物館

日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2010年10月

「鯨の潮吹き」

  • 昭和初期
  • 長崎県長崎市/紙・木・竹

 毎年10月7~9日の3日間、長崎の氏神、諏訪神社の秋季大祭「おくんち」が開催されます。この祭礼は、江戸時代、寛永11(1634)年、二人の遊女が諏訪神社神前に謡曲「小舞」を奉納したことが始まりといわれています。当時のキリシタン対策もあって奉行所も後押ししたようで、豪華な行事へと発展しました。

 「長崎くんち」は、日本三大祭と称され、奉納踊は国指定重要無形民俗文化財に指定されています。各町から龍踊、コッコデショ(太鼓山)、唐人船・・・など異国情緒豊かな奉納踊りや農耕儀礼に因む曳物が登場し、祭礼の歴史を辿ってみると長崎独特の文化が感じられます。

 中でも、万屋町が曳き出す「鯨の潮吹き」(「鯨のだんじり」とも)は、江戸時代の古式捕鯨の様子を表現し、全長6メートル、重さ2トンもある曳物で、背中からポンプで水を吹き上げる仕掛けです。安永5(1776)の初奉納以来、祭りの人気を集め続けています。7年に一度の奉納のため、次回は平成25(2013)年に予定されています。

 写真は、その「鯨の潮吹き」の曳物を玩具にしたもので、戦前に製作された貴重品。鯨が吹き上げる潮にはササラのように細くした竹の繊維が用いられています。木製の台には四つ車が付き、転がすと、鯨の左右のひれがゆらゆら揺れ動いて、鯨の大らかさをかもします。明治44(1911)年刊行の玩具画集『うなゐの友』には、古くから祭礼玩具として子どもたちに遊ばれてきたことが記され、また、昭32(1957)年の年賀切手の図案にもなりましたが、惜しまれつつ廃絶してしまいました。当館は、他にも大正から昭和初期製の「鯨の潮吹き」を所蔵しています。この時代の資料が多く残されているのは、蒐集家にも人気があったからでしょうか。

 現在開催中の1号館「玩具にみる日本の祭」展でご覧いただけます。